第13話

「……なるほど、……ゴクリ」


 ジジイの土下座から10分ほど経っただろうか。俺は町長のジジイとハナフック姉さんから七人のドS姉さんについて説明を受けた。


 七人のドS姉さんについてまとめるとこうだ。


・この世界には伝説級にドSな七人の姉さんが存在する。

・そのドS姉さん達は一人一つ伝説のアイテムを守っている

・伝説のアイテムは魔王リョナオーを倒すのに必要な力を宿してあり、それを魔王を倒しうる伝説のドM勇者にたくすために守っている。

・七人のドS姉さんは、アイテムを取りに来た人間に対してそいつが本物のドM勇者か見極めるためめっちゃドSな試練を課してきて、その試練に対してドMを極めたリアクションを取れたものにのみアイテムを授ける。

・そのアイテムを7つすべて集めれば、リョナオーを倒しうるさらなる力を宿した聖地への道が開かれる。


 といった感じだ。


 まあ、設定的には普通によくあるRPGっぽいもの。だが特筆すべきなのはアイテムを守護しているのがドS姉さんであることと、それを倒すのではなく、姉さんからドS行為をされることによって認められアイテムが貰えるということ。つまりは戦わずして敗北すればいい。負けることと支配されることなら得意だ。しかも、世界に選ばれたたった七人のドS姉さん、いったどれほどのドSなのだろうか。考えただけでイッてしまいそうになる。


「……だから、こんなドMな試練頼めるのはお主しか……」


「おい! 一番近いドS姉さんはどこにいるんだ!」


 ジジイの懇願を聞き終わるより早く、俺はそう叫んでいた。伝説のアイテムを守りしドS姉さんだと? それが7人もいるだと? つまりそれは、7回も天国にイけるということだ。


「なんだそれだけ言っといてどこにいるのか知らないのか? なんて使えないジジイなんだ!」


「ちょちょ、ちょ! 勇者よ! 待たれよ!」


「は? 待つわけないだろいい加減にしろ場所がわからないのなら寝る間を惜しんで探せ! 俺の脳とちんこが通常時のシワを取り戻す前に見つけないと大変なことになるぞコラァ!」


「いや、わ、わかった、わかったから少し待たれよ!」


「は? なんだお前蝋人形にしてやろうかドMだからって蝋は垂らされるだけじゃないいてとこ見せてやろ……」


「こらッ!」

 ゴスン。


 突然、頭に強い衝撃。そして一瞬おくれて頭頂部に激痛うが走る。


「いってぇ! くそっ、なんだ?」


 俺は事態を把握しようとあたりを見回す。すると俺のすぐ後ろには怒った顔で手刀を構える我らが未来有望なドSの卵である、フック姉さんがいた。


「あれ? フック姉さん?」


「省略して船長みたいな感じにするなー!」


 言いながらもう一度額をゴスンと殴られる。


「痛っ!」


 そして、俺を殴った後のフック姉さんは少し考え込みながら、


「……あれ? でもハナフック姉さんよりはましかぁ、じゃあ別によかったのか」

 なんてことをつぶやいている。別に良かったのにとりあえず殴るとか、Sの階段登る君はまだ、ハナフックさ、って感じになってて僕は嬉しいです。


「というか」


 冷静になった頭で事態を把握する。ジジイから7人のドS姉さんについて説明→脳が勃起した俺→早くドS姉さんの居場所を教えろとジジイ詰め寄る。


 ……なるほど。


 ジジイの方に視線を送る。ジジイは少しつかれたようにぐったりと地面に膝をついている。ふむ、どうやら俺は興奮しすぎてジジイの胸ぐらを掴んでガクガクと揺さぶってしまったらしい。


「すまん、町長のジジイ」


 ジジイにどう思われようと知ったこっちゃないが、完全に俺が悪いので一応ちゃんと頭を下げて謝っておく。


「……大丈夫だ、それより、……行ってくれるのだな? 7人のドS姉さんのもとへ」


「ふっ、イクとかイカないとかじゃない。そこに凌辱があるのならば、我慢できずに吸い寄せられて依存する。それがドMってやつだ、そうだろ?」


 カッコつけた感じで言うと、ジジイは顔をぱーっと明るくする。


「そうか! 行ってくれるか! おい! ハナフック!」


 呼ばれたフック姉さんはなにか嫌な予感を感じたように冷や汗を垂らしながらかすれた声で、


「……はい、なんでしょうか」


「お主には是非、ドM勇者の付き人を頼みたい! この世界の未来のため! 是が非でもタイゾー殿をドS姉さんのもとへ導くのだ!」


「……ですよねー」


 言葉ではっきりとそう言われてしまったフック姉さんはなんかもう全てを諦めたような顔で、


「はぁ、仕方ないか。しばらくよろしくね? タイゾー」


 なんて、凄い嫌そうな声で俺に向き直って言う。


「ふむ、俺に同行するのをめっちゃ嫌そうにしてくれるのは正直クォーターボッキレベルの嬉しさがあるが、そんなに嫌なら断ればいいだろ」


 と、俺が一応もっともなことを言うと、フック姉さんはどこか遠い目をしながら、俺に向かってというよりはどこか自分に言い聞かせるように、


「……ふふっ、普通だったらそうだけどね。わたしはこの街の役場の職員。町長の言う事は絶対なんだよ。今日も明日も明後日も来年も、安心してご飯を食べるためにはキミのドMハラスメントに耐えるのも必要なことなんだよ」


 なんてことをいう。


 なるほど、この世界における公務員的なポジションということか。そしてこのフック姉さんはどうやらかなりの社畜体質なようだ。俺がエロいお姉さんの願望を前にすると自動的に絶対服従待ったなしなのと同じように、彼女も上司に服従してしまう性分なのだろう。


「そうか、まあとにかくよろしくなさあ行こう! まだ見ぬドS姉さんのもとへ!」


 そう、俺が力強く言うと、フック姉さんは呆れたようにクスッと小さく笑うと、


「もう、そんなワクワクして、どんだけ楽しみにしてるの」


 なんてことを言うのだった。

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