第11話

「……ゴクリ」


 あたりを見回すと、もうほとんど裸なんじゃないかってくらいに面積の少ない衣装に身を包んだスタイルグンバツな姉さん達が俺を取り囲んで踊っている。そんなたくさんの姉さん達の踊りは、自分の身体が性的に魅力的であることを全力で表現するために存在しているかのようで、腰が揺れるごとにその性的に大切な部分だけを最低限隠しているビキニパンツ的な布はその柔らかそうで、扇情的な部分へと食い込みそこに眠るトレジャーを強調している。もう、裸よりもエロいとさえ思えてしまう部分は何時間でも見ていられそう。そしてもちろんその豊かなバストもまた極限まで面積の少ないビキニ的なこれはなんだろう、もう小さな正三角形の各頂点から紐がまっすぐに伸びているとしか言えない感じの布がもう胸ではなくバストではなく乳首と乳輪を隠すために設計したとしか思えないギリギリさで、そのデザイン性からはもう、1ミリでも多く肌を見せてやるぞという強いドSな意思を感じ、見ているだけでイキそうになる。


 踊り子達はテーブルに載せられた豪華なディナーを食べる俺の周りをゆったりと回っていて、次にやってきた踊り子は俺を見るなり顔を赤らめて、


「……うぅ、なんでわたしまで」


 なんてことを言う。それは紛れもなく、ハナフック姉さんだった。


「おぉ、ハナフック姉さんの……」


「ちょっとあんまり見ないで欲しいんだけど」


 もちろん、ハナフック姉さんも他の踊り子と同じようにギリギリの布だけにしか身体を包まれておらず、その白く滑らかな身体は惜しげもなく俺の視線に晒されていている。その姿は多少の凹凸の少なさや身体のミニマムさにより迫力という点では他の踊り子には劣るが、俺を何度もブレスレットでぶん殴った他ならぬハナフック姉さんの身体だと思うとずっと見ていたい気持ちになる。だが、俺はドMだ。相手に「見ないで」と言われて見続けることは欲望の本質に背いてしまう。もっとも、口では「見ないで」と言いながら縄で縛られ目を無理やり指で開かれて物理的には見ざるを得ない状況を作られたうえで見続け”させられる”のならそれはドライオーガズムまったなしなのだが、今は普通にそんな状況ではないので素直に従う。


「わかったよ、ハナフック姉さんがそういうなら、その小さな胸の中心にある優しくて柔らかな性感帯を想像させる滑らかな肌の沈み込みも、幼くも可愛い両脚の根源にあるその内側に淫靡な蜜を秘めていると願わざるを得ない部分も諦めて目を閉じることとしよう」


 言いながら目を閉じようとするとハナフック姉さんは、


「よ、余計なことを余計な表現力で言わなくていいから!」


 と、顔を真赤にして叫ぶのだった。おかしいな、俺は相手の裸体を見てしまったらたとえ相手から見せに来ていようと、怒られていようととりあえず全力でその裸体にへりくだって称賛するというドMの流儀に従っただけなのにな。


 ジジイから伝説のドM勇者であることを認められてから一時間ほど、俺は街の住人から全力でもてなされていた。眼の前のテーブルにはこの街の豪華な食材をふんだんに使ったのであろう漫画に出てきそうな豪華な料理(鳥丸焼きな感じのデカいチキンとか、謎のスープとか、骨の飛び出すマンガ肉的な肉塊とか)が、絶対に一人では食べ切れない分量で乗っかっている。それを取り囲む多分この街よりすぐりの美女たちがギリギリの服を着て俺の周りを、輪になって俺の周りを少しずつ、俺が全員の身体を飽きずに堪能できることに配慮したスピードで回っている。しかし、この状態は今の俺にとって、


「ーーーーどうしよう、苦痛だ」


 飯も普通に美味いし、お姉さんの踊りもてぃんてぃんをいい感じで刺激してくる。


 しかし困ったことに俺はドMだ。飯はともかくこんなふうに性的に饗されるのは俺の心の奥底に眠りしわがままなインナーチャイルドを泣き叫ばせてしまう事象なのだ。


 しかも更に困ったことに俺はドMだ。嫌なことを嫌だと言って女性に辞めさせるのもまた流儀に反するのである。

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