第6話

「と、いうわけで、この世界では、性欲の強さと嗜好性で能力が決まるんだよね」


「なるほど」


 ロリ姉さんの説明を聞き終えた俺は納得して頷く。


 ロリ姉さんの話をまとめるとこうだ。


 曰く、この世界はRPGみたいにパラメーターが存在する。HPは生命力、MPは魔法を使えるエネルギー、力、体力、素早さ、知能、精神はそのままその個人の能力を表し、運の数値はそのままの運というよりは戦闘においての攻撃の当たりにくさとクリーンヒットのしやすさに影響するらしい。また、SP(スキルポイント)というものがあって、それは初期値と同じ数値がレベルアップごとにもらえ、それを使って様々なスキルを新しく覚えていくらしい。


 そして、力、体力、素早さ、知能、精神、運は普通に個人の能力に応じて決まるもの(レベルアップにより増えもする)だが、HP,MP,スキルポイントの決まり方だけ少し特殊で、HPは変態性(性欲の強さ)、MPはM度(いじめられたい願望の強さ、拗れ具合)、スキルポイントはS度(いじめたい願望の強さ、拗れ具合)によって決まり、レベルアップによって上昇もするが、それも適正がなければ上がらないこともあるとのことだ。


「そしてその結果、ロリ姉さんはMであるということだな」


「そうそ……、いやロリ姉さんってなに?」


 ロリ姉さんは頷こうとして、俺からの呼び名に引っかか理を覚えたようだ。……しまった、口に出してしまうとは。普段人と喋らなすぎて思ったことをそのまま口に出してしまうのは悪い癖だな。


「あー、いや、その、俺はほら、ドMだろ? ドMな俺は、世にいるドSな人のことを敬意を込めて”姉さん”と呼ばせてもらっているのだ」


「あー……」


 俺の説明を聞いたロリ姉さんは、まるで世界の滅亡を悟ったかのような遠い目になる。つまり俺の生き様のことを世界滅亡レベルで見下しているということですね捗ります。


「そしてロリに関してはアンタは背もなんというかこう、狭いところに入れそうな感じだし、身体つきもなんというかこう、シュッとしてるので見たを形容してみた!」


 そしてロリの部分も含め、ロリ姉さんの由来を完璧に説明して見せると、ロリ姉さんは今度はいきなり怒って、


「チビで寸胴を気遣った感じでいうな!」


 と、俺の額にデシっとチョップをした。しかし、ロリ姉さんの手首にはゴツい腕輪が装着されているので、俺の額的にはもうゴスン! という感じのダメージが入る。


「ウゴッ!」


 あまりの痛さに自分のステータス欄を確認すると、HPが9988になっていた。スライムの体当たりより喰らってる。俺のドMっぷりに呆れ返っているアンタ達はこう思っただろう。


『あ、こいつめっちゃ喜ぶだろうな』


 って。


 だが甘い。俺はプロのドM、暴力さえ振るわれればなんでもいいというわけではない。今回のチョップに関しては俺の無礼なセクハラ発言に困ったロリ姉さんが、困った挙げ句みせた”抵抗”に値するアクションなのだ。つまりこの時チョップを繰り出したロリ姉さんはSではなく、それをされた俺もまたMではないのだ。つまり、この攻撃は痛いだけだ。


「ーーーーあ、ごめん」


 殴ってからブレスレットによる攻撃力の高さに気づいたロリ姉さんはちょっと焦ったように謝ってくる。な? ドSムーブじゃないだろ?


「大丈夫だ、気にするな」


 俺はなるべくロリ姉さんに気を遣わせないよう、腰に手を当て堂々とした様で力強く応える。プロのドMというのは、こういう時気が遣えるものなのだ。それを受けたロリ姉さんはまだ若干申し訳無さそうに、「あはは……」と乾いた笑いをしたあと、


「……っていうかもうこれ見てもらった方が早いと思う」


 といって右手を斜め上にかざす。


「おお?」


 ロリ姉さんが手を向けた方を見ると、俺のステータスのやつと同じ黒い板が空中に浮かんでいて、そこに書かれていたのは、


サニー・ハナフック


職業:戦士

Lv:10

HP:65

MP:7

力:12

体力:18

素早さ:6

 知能::3

 精神:9

 魔力:1

 運:25

 EXP:28

 SP:2


 と、いうものだった。


 と表示されている。


「ね? ほら、MPのほうがSPより高いよね? これってわたしがSじゃないっていう証拠なんだよ」


 と、少し頬を赤くしたロリ姉さんは言う。


 ……ふむ、しかしこれは。


「SPが2、あるな」


 たしか、SPというのはSであることの証だったはずだ。

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