第5話
「えーっと、キミ本当にドM? 初対面の女の子にそんなこと聞く?」
俺の突然の質問、『あなたはドSですか』を受け、先程よりも更にドン引きしたロリ姉さん(哲学)は大層戦慄した様子でジト目を向けてくる。ふむ、言われてみれば確かにそうか。相手との距離感を無視していきなり直球で自分の聞きたいことを聞くというのは基本的にはドSの手法だ。
しかし、俺はプロのドM。相手にドン引かれるというご褒美を狙ってのこの無礼さであることは言うまでもない。もっというとこのロリ姉さんとこれっきりの関係では無いのだとしたら、いつかまたこの時のを使って、『キミ、初対面の時わたしにドSかどうかって聞いたよね? そんないやらしいこと自分は聞くくせに、今更拒否権なんてあると思ってるのかな?』とか言われて恥ずかしいこと言わされたり恥ずかしいこと命令されたりする可能性があればいいのにということまで計算済みだ。
計算式がガバガバ過ぎて論破王の人に聞かれたら『それってあなたの願望ですよね』とか言われそうだけどそれはご愛嬌。
なので俺は未来のご褒美を期待してさらなる無礼の波動を浴びせるため、ロリ姉さんジト目にも負けずひたすらにじーっと見つめる。どこからか『お前それのどこがドMなんだよ!』という怒りの声が聞こえてきそうだが、ご褒美を期待してる俺は無敵なのでそこはどうか許して欲しい。そしてなおも見つめ続けているとやがてロリ姉さんはおずおずと口を開き、
「うー、……しょうがないなぁ、わたしはたぶん、どちらかというとぉ、ーーーーえ、むなんだと思う」
などど、顔を真っ赤にしながら絶望的なジャッジを下すのだった。
「……ガーン」
世界中の女性すべてドSであって欲しいと願う俺は、そのあまりに残酷な現実に打ちひしがれ、そのまま地面に崩れ落ちる。
「ちょ、ちょっと!」
いきなり崩れ落ちた俺を見たロリ姉さんは驚いてこちらに駆け寄って来る。
「……こは?」
「え? なに?」
「しょーこは? 証拠はあるのか? 自分がそう思い込んでるだけかもしれなくなくななない? 本当にドSにイかされたことあるのか?」
と、俺が涙を流しながら言うと、ロリ姉さんは困ったように、
「えーっと、困ったなぁ、さっきからずっとセクハラが凄いなあ、……ねえキミ」
と、嗜めるような口調で言う。お、これは?
「はい!」
俺は凄まじく週便な動きで飛び跳ねそのまま正座で着地して最高の返事を返す。そう、これはお仕置きチャンスかもしれない。
そんな俺の急変にロリ姉さんは額に汗を浮かべる。
「えー、……っと、ね? その、まず、初対面の女の子に、そういう、その、そういう経験? みたいなこと聞いちゃダメなんだよ?」
ロリ姉さんは小さな子にめっと叱るように人差し指を立てて言う。なので俺は、
「はい!」
ととてもいい返事を返すのだが、何故かロリ姉さんは更に困ったようにこう続ける。
「うー……、まぁ、今回はその、悪気もなかったみたいだし許してあげるけど、もうそういうことやっちゃダメだからね」
「はい!」
引き続き正座をしながら無駄にいい返事を返すと、何故かロリ姉さんはちょっとムッとした様子で、
「……もう、ほんとにわかってるのかなぁ」
と口の中で小さく呟いたあと、
「まあいいや、もうめんどくさいから普通に答えるけど、わたしはそういう経験はないよ? でも、ちょっとだけMPの方が高いから、わたしがMなのは間違いないと思う」
なんてことをいう。
「え? MPが高かったらMなのか?」
と、いうことはMP9999の俺は最強のドMということか? ……なら間違ってないな。
「え? そんなことも知らないの? しょうがないなぁ」
と、ロリ姉さんは呆れたように言うと、性的嗜好とパラメーターの関係について話し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます