第13話 進みゆく関係

保護者達とは都合が合わず、結局3人で来ることになったプール。


「おぉぉ…おっきいねー」

「何から入る!?」

「こらこら、まずは準備体操からでしょ」

「おう、そうだった」


「改めて…あれ行こう、あれ!!」

末莉が指さしたのは…かなりでかいウォータースライダー。

…籠女が首を左右に振って、末莉の腕をつかんでぷるぷると震える。

「どうした?怖いのか、籠女~」

「確かにいきなりトップギア感あるわよね。他行かない?」

「そうだな~…お?あれは…くくく。」


「籠女、ここに立っててみ。」

「え?なんで…きゃ!?」

「あぁ、上のバケツから水が降ってくるのね」

「けほけほ、ひどい~…」

「なはは、すまんて」



「ふ~ん、スライダーにもいろんな種類あんだな~。お、これなんか、初級者向けって書いてあるし…籠女、行ってみない?」

「じゃあ私は終わり際の方で待ってるわね。」


「あの…あのあの…」

「どうした籠女、もう後には引けないぞ」

「勢い、凄いんだけど…」

「じゃあさ…手、繋ごうか」

「うん…。」



「きゃああああぁぁぁぁぁ~!!!!」

「うおおおおお!?」

「…初心者向けじゃなかったのかしら…。」



「大丈夫か?籠女」

「ぐすっ、ひっく…」

「す、すまんって!…仕方ないな、目、瞑れ」

「ふぇ…?…っ!!」

末莉は籠女の頬にキスをした。

「…落ち着いたか?」

「…もっかい、して…。」

「しょーがない奴だな…んっ。これで、いいか?」

「ふぁ…ありがと…」


とろんとした顔の籠女を見て、末莉は危うさを感じた。…これ以上したらまずい、と。


「さ、さて、葵のところへいこうぜー。」

「う、うん…。」


「あぁ、いたいた。勢い良すぎてどっか飛んでったのかと思ったわ。」

「ロケットじゃあるまいし、そんなことはない。あー!ちょっと腹減ったなー。何か食べようぜ。」



「カレーうまー」

「籠女は何食べてるの?それ」

「うおう」(チュロス)

「なんて?」



「よし!腹ごしらえも済んだし…。…どうしよっか」

「序盤に飛ばしすぎなのよ。無難に流れるプールでいいんじゃない?」

「……。」

「籠女?」

「ご、ごめん、私ちょっと今日は帰るね」

「あ、あら?流れるプール楽しみにしてたのにね。わかったわ。」

「…私のせい…なんかな…」

「そりゃあんな派手なスライダー流したらそうなるわよ」

「そうじゃないんだ…」

「…?」



「はぁ、はぁ…ごめんね、二人とも…」


少し考える時間が欲しい籠女だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る