第10話 過保護なお友達

誘拐事件に遭ってから…末莉の様子がおかしかった。


「籠女、トラウマになってないか?大丈夫か?」

「うん、だいじょうぶだよ」

「籠女…もう二度とあんな目に遭わせないからな…」

「う、うん、どうしたの?末莉ちゃん…」


「ゎふ~…お風呂、やっぱりいい気持ち~」

「だな~」

「…なんで居るのかな…?」


「そうだ!籠女はトイレに行った時に捕まったんだ!籠女、トイレも一緒に」

「やーめーてー」


「ほ、ほら!葵も何か…」

「この…どあほうっ!!」

「げふうっ」


葵に思い切りぶったたかれる末莉。


「よけーにトラウマになっちゃうじゃない!!何考えてんのよ!それに私たちは籠女のボディーガードじゃなくて友達でしょ!そこんとこわかってんの!?くどくどくどくど」

「はい…」


おまけにお説教まで受けていた。


「あ、葵ちゃん…末莉ちゃんも心配してくれてるんだよ…。…たぶん」

「籠女がそういうならいいけど…嫌なら嫌って言わないとまた同じことの繰り返しよ。」

「ハ、ハイ…。」


おかげで矛先は籠女にむいてしまった。


「でもまぁ、事件は解決したし、また集まれたし、ひと段落ね。嫌なこと忘れにって訳じゃないけど、こないだ駅前に出来たクレープ屋さんに行かない?」

「クレープ!いきまふ!」 

「あはは、嚙んでるの」

「籠女は本当にクレープ好きね。じゃっ、行きましょ」



「えーと、これと…これかなぁ…?あぁぁ~、これトッピングしたい~…!」

「おーい、まだかぁ?」

「…好きなのは良いけれど、迷いすぎなのよね…。」


悩みに悩んだ結果、籠女だけ派手なクレープになっていた。

「それ…食いきれんの?」

「?一口食べる?」

「ごほっ…不意打ち…じ、じゃあ、いただくかな」

「なんで末莉の方が幸せそうなのかしらね」


あんまり喋ってると溶けて(主に籠女が)大惨事になるので、しばらくひたすらクレープにパクつく3人。

そして食べ終わり…ベンチの真ん中に座っていた籠女が…不意に二人を抱きしめる。


「えへへっ」

「お、おうっ?どしたー?籠女」

「嬉しそうね」


「お母さんから聞いたんだ…二人とも一生懸命、探してくれたって。…ありがとっ」

「ト、トーゼンだろ」

「そうね。お礼なんて言わなくて良いのよ。」



甘い幸せに包まれつつ、3人は改めてかけがえのない友達同士なんだと思った。

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