第8話 映画を見に行こう!

末莉が籠女のベッドの上で足をパタパタさせながら

「今日も今日とて何をしようー」

「お菓子作り?」

「こないだしたろ。」

「スキル上げたのに…」

「なんのだよ。」


「じ、じゃあ、あの…」

おずおずと葵が3枚の券を差し出した。

「おっ、それは」

興味を示す末莉。映画のチケットだった。

「ホントは家族で行く予定だったんだけど…別の予定が入っちゃったみたいで…行かない?」

「いいじゃんいこいこ!」

「映画ひさしぶり、たのしみ~」

満場一致で映画鑑賞に行くことになった。


「着替えていく?」

「そのままでいいんじゃないかな~?」

「籠女~」

「へ?なに?」

「着替えていく?」

「なんで二回聞くのかな…」

「籠女の着替えが見たいだけでしょ…この、オッサンか!ほらいくわよ!」


しかし、この時、制服から着替えなかったのが実は仇となった。



映画館に着いた一行を見て、

「おっ…あの制服の学園は確か…ククク。」

「狙いますか?」

「あぁ、しくじるなよ…」


と、怪しげな男たちを華麗にスルーして上映される映画チェックする三人。

「で、末莉さんや。そろそろタイトルをおしえてくれんかのう。」

「何その口調。…あれよ。」

「え…ほらー…?」


明らかにホラー映画だった。


突如、顔が真っ青になる籠女。

「あ、あら?籠女、ホラー苦手だった?ご、ごめんなさいね。やめとく?」

「うぅ…いく…3人で見たいもん…」

「くぅ~!可愛いなぁ籠女は!」

「はいはい。でも籠女、気分が悪くなったりしたらいうのよ?」

「あ、ありがとう…」

「…じぇらしー」

「何がよ」



各々、好き好きな飲み物とポップコーンを買って中へ。

「わっ、中、暗いね…」

「つか、人すくなっ…」

「うーん、ハズレだった?」


とりあえず3人並んで着席。

「でもまぁ、人少ない方がのんびり見れるな!」

「…ほらーを?」

「あ、案外面白いとこ、あるかもしれないわよ!」



そして上映開始…。無惨なシーンが続く。ポップコーンを食べながら末莉が、

「私ホラーわかんないんだけど、こんなもんなのか?」

「い、いや…これは…籠女、大丈夫…?」

「そんなレベルなのかよ。籠女、おーい。」

「わ、わたし…ちょっとお手洗い行ってくる…」

「ほんとに無理すんなよー?」

「何なら外で待ってていいから…ね?」



「お手洗いは…こっち…かな?」

「こっちだよ」

「え?…きゃっ!……。」



「結局、籠女戻ってこなかったなー。どこに居んだろ」

「うぅ…私まで気持ち悪くなっちゃったわ…。」

「あれ?居ない…帰ったのかな。」


「ち、ちょっと私も帰らせてもらうわ…末莉、あとはお願いね…」

「心得た!」


と、しばらくその辺を探したが、末莉は籠女を見つけられず…

「むう…暗くなってきちゃったな…帰ったかな?私も帰ろーっと。」



その夜。

「もしもし?末莉ちゃん?」

「あれ、籠女のお母さん。籠女、顔真っ青でした?あっはは」

「…籠女、まだ帰ってこないのよ…」


ゴトッ

思わず持っていたスマホを落とし、末莉は茫然とした。


「…え………。」

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