4 屋上
入学式の日から数日。
ここ最近はクラスの中でもだんだんとグループが出来つつあった。
それは幼馴染の勇樹も例外ではなく、今も何人かの男子と楽しそうに話している。
俺?
俺は、まあ、あれだ。
まだ本気出してないって言うか、なんと言うか‥‥‥。
1人で机に突っ伏してるのが現状だよ。
なんか文句あるのか、クソがっ。
見ての通り友達なんて言える人間はおらず、休み時間は基本1人。
時々話しかけて来る奴はいるけど、それも全員事務的な会話をしたらすぐにどっかいくし。
そう言えばみのりも話の合う友達ができたって報告してきたな。
すっごいドヤ顔で。
‥‥‥思い出したらイラついてきた。
後で入学式の日に撮った写真送りつけてやろう。
まだ送ってなかったかちょうどいいや。
=====
チャイムと共に4限目の授業が終わり昼休みになった。
いつもなら自分の席で持ってきた弁当を食べるのだが、ここ最近はだんだんと居た堪れなさが大きくなってきていたので別の場所に移動することにする。
みんなが友達と食べてる中で1人だけぼっち飯ってすごい居た堪れないんだよ。
わかるか?
あのふとした瞬間に向けられる目線。
「なんでアイツ1人なの?」って目が言っているんだよ。
あれほど辛いものはないと思う。
「蓮」
「ん?」
どこで弁当を食べようかと考えながら席を立つと同時、幼馴染の声がした。
そちらの方向に顔を向けるといつも通りの幼馴染、勇樹が立っている。
「何か用か?」
「昼飯一緒にどうかなって。ほら、お前いつも1人で食べてるだろ?」
「あー‥‥‥‥。いや、遠慮しとくわ」
「そっか。じゃ、また今度一緒に食べよう」
「わかった」
「じゃあ」
勇樹は俺がなんて返事をするのかわかっていたんだろう。
苦笑して友人達の方に戻って行った。
俺も弁当を持って教室の外に出る。
「‥‥‥なんとなく合わないんだよなぁ」
廊下を歩きながらそんなことを呟く。
今のは勇樹と合わないって意味ではない。
勇樹の友達と合わないって意味だ。
昔、勇樹と俺、勇樹の友達で遊んだ時にその友達と意見が合わなかった。
その時は俺とは合わないタイプの奴だっただけだと思った。
でも、それ以降も意見や考え方なんかが勇樹の友達とばかり合わないことが多くあり、喧嘩寸前まで行ったこともあったくらいだ。
だから俺は自然と勇樹の友達とはできるだけ関わりを持たないようになった。
それでも勇樹はさっきみたいに時々俺を誘ってくる。
俺が頷かないってわかってるはずなのに、気を遣って声をかけてくれるのだ。
さすが主人公。優しいね。
まあ、でも。
「俺が頷くことはないんだけどな」
=====
かれこれ十数分校舎内を歩き回ってるがいい場所が見つからない。
ラブコメ世界の学校なんだからぼっちに優しい場所を作っとけよ。
「‥‥‥ん?ラブコメ世界‥‥‥?」
ラブコメ‥‥‥フィクション‥‥‥非現実‥‥‥。
「‥‥‥あっ」
唐突に思いついたことを確かめるために階段に向かう。
階段に着き、そのまま一番上まで登っていくと目の前に一つの扉が現れた。
俺は縋るような思いでドアノブを握り、向こう側に押した。
開いた。
風が吹き込み、太陽の光が体に当たる。
そう、俺が今開いたのは屋上に続く扉だ。
これまで全く気にかけなかったがここはラブコメ世界。
前世とは異なる理想の詰まった世界なのだ。
ならば屋上が開放されているのも必然。
素晴らしい。
だが、屋上が開放されていると言うことはーー
「そりゃぁいるよな、人」
フェンスに背を預けるようにくつろいでいる人、地面に輪になって座っている人、寝転んで昼寝をしている人などなどそれなりの人がいる。
まあ、見た感じぼっちが何人かいるのが唯一の救いか。
これなら教室よりはマシか。
とりあえずどこかに座ろうと足を前に出すと同時に気がついた。
屋上にいる人は大体日向になる場所に座っていて日陰を避けているように見える。
そして屋上の出入り口は豆腐のような形になっており、扉の反対側はちょうど日陰になっている。
もしやと思って扉のついている壁の角から覗き込むように反対を見ると、誰もいない。
‥‥‥勝ったな。
俺は不敵な笑みを浮かべて足を進める。
どうせ座るなら向こう側からの視線が来ない場所がいいと思い、壁沿いに歩いて右に曲がる。
「「あ」」
先客がいた。
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