第6話 対面?
「私もついていく!!」
俺が家を出ようとすると、ミコは手を広げてとおせんぼしてきた。
「ごめん、さすがにミコは連れていけないよ」
「なんで!?」
「いや、、、イラストレーターさんがミコのこと見たら大変な事になるから」
ミコは納得しかねるというように気難しい顔をしていた。
そこまでしてミコもイラストレーターに会いたいのだろうか。
「なんでそんなにイラストレーターさんに会いたいんだ?」
「そっ、それは…」
ミコはテノヒラで口を噤んで神妙な顔をした。かわいい。
「もしかしてMVのイラストに不満があるとか?」
「そういうわけじゃないけど…」
「私はもっと可愛い!! みたいな?」
「馬鹿にしないで!!」
ちょっとからかいすぎたみたいだ。しかし、それからもミコは頑なに付いていくと主張したが、俺は家で待ってるよう半ば強引にミコを説得した。イラストレーターのmizuhoさんは俺の使ってるバーチャルシンガーを知ってるどころか、いつもイラストを書いてもらっている。なので、なおさらミコと直接合わせるわけにはいかないのだ。うちに突然現れたミコという少女について、俺すらも分からないことだらけなのだから。
「じゃ、行ってるから」
「早く帰ってきてね…」
ミコが寂しそうな顔をして言った。よほどイラストレーターさんに会いたかったのだろう。出来るだけ早く帰ってくると約束して、俺は家を出た。
ーーーーー
待ち合わせ場所の喫茶店には30分前に着いた。張り切って早く着きすぎたみたいだ。その旨をmizuhoさんにLINEで伝える。既読は付かなかったが、まだ早いので気長に待つことにした。
それにしてもミコはなぜあそこまでイラストレーターに会いたがっていたのだろうか。まぁ自分の本当の姿を見てもらって、イラストを描いてもらいたいと思うのも当然と言えば当然だ。仮にミコが人気バーチャルシンガーになったら、普通のイラストはもちろん、えっちぃイラストだって描かれることがあるだろう。本人が見たらどういう反応をするのだろうか?少し興味がある。
なんて馬鹿な事を考えていたら待ち合わせの時間になっていた。
mizuhoさんはどんな人なのだろうか、LINEの名前もプロフィール画像もTwitterと同じだった。おそらく仕事用なのだろう。俺は普段リアルで使っているアカウントしか持ってないのでmizuhoさんともそれで連絡を取っている。まぁ正直本名バレても困らないレベルの知名度だからな、俺は。それに引き換えmizuhoさんはTwitterのフォロワーも10万人以上いるし、人気ボカロ曲のMVも手掛けたりしている。そりゃ本名はバレたくないだろう。
突然俺のスマホからピコン、という音が鳴った。LINEのメッセージを伝える音である。慌てて確認するとmizuhoさんからであった。
『ごめん!!急遽仕事が入って行けなくなっちゃった!!本当にごめん…』
俺は内心ガッカリ半分、安堵半分のように感じた。もちろん会ってみたいという感情はあったが、mizuhoさんが、実際は使ってるアイコンのような可愛い女の子ではなく、怖い男の人とかだったらどうしようと、少し不安にも感じていた。まぁつまり、要約すると、mizuhoさん=可愛い女の子という俺の中のイメージが保たれたて安堵、ということだ、会えなかったのは残念だが…
『いえ、全然大丈夫ですよ!お仕事頑張って下さい!!』
そう返信して店を出た。
家は帰り、部屋に戻るとミコが慌てた様子で駆け寄ってきた。
「どうだった?可愛い女の人だった?ミコより可愛かった?」
「いや、急に仕事が入っちゃったみたいで会えなかったよ」
「はぁ〜ーーー」
ミコは俺が会えなかったことを聞くと、大きく息を吐いてとても安心したような表情をした。そして元気な声で言った。
「私歌いたいから早く曲作って!!」
mizuhoさんに会えなかったのは残念だが、ミコのためにも、自分のためにも曲作り頑張るか!!
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