第17話
ご主人様と私はダンジョンに来ていた。装備については正装だ。ご主人様は弓矢を勧めてきたが断らせてもらった。奴隷なのだから命令すればいいのにPTメンバーとして扱いたいと言って無理強いはしなかった。受けた命令も以下の3つしかない。
1.ご主人様ではなく呼び捨てにしろ
2.俺と敵対するな
3.俺の秘密を口外するな
1についてはご主人様と直接会話する際はそうしている。2は言うまでもない事。
3については1.2に背いてでも守れと厳命された。これからダンジョンで教えてくれるという事だがそこまで秘密にしたいと言うことは犯罪でもしているのか?普通の人のように感じていたがどのような裏の顔を持っているのだろうか。
山岳地帯で鳥型魔物を狩りながら進む。黒い袋にドロップ品を入れていくが膨らむ様子がない事からマジックバックなのかと思う。ダンジョンの深層で稀に見つかるもので発見した場合は国に献上義務があるはずだが、これが秘密なのか。と訪ねると
「これは俺のスキルだな。秘密の一端なので黙っていてくれ。」
と袋を渡しながら応えてくれた。そして袋を受け取ると消滅し焦っていると説明をしてくれた。ご主人様にしか使えない道具を具現化するスキルがあるとのことだ。
貴族には血を連ねる者だけに発現する血統スキルというものがあると聞く。ご主人様は貴族の落胤でそれを秘密にして欲しいという事かと思ったがそれも違うと笑われた。
ダンジョン攻略も進み20階層まできた。ここまで来る間は俺に任せとけ。と言われ見てきたがご主人様には悪いが戦闘センスは壊滅的だと思う場面しかなかった。倒せるかもしれないが怪我をする。
「活躍の場を私にもください。」
この言い方ならプライドを傷付けはしないだろう。しかし受け入れられる事はなかった。いざという時は身を呈して守らなければ。
「ここから見せるのが俺の秘密だ。」
「変身っ!!」
ご主人様が光に包まれ骨がみしみしと音をたてている。大丈夫なのかと見ていると光の中から少女が出てきた。幻術で姿を変えても身長は誤魔化せない。あれはご主人様なのだろう。見たこともない能力に驚愕する。その姿に満足そうに頷くご主人様。
「俺はまだもう一段階変身を残している」
「換装っ!!」
今度は光るシルエットになり何やらダンスを踊っているようだ。そして一部の光が弾け大きなリボンに変化する。
「おぉ、神よ。こんな事があるのか」
私は一瞬で理解した。ご主人様は魔法少女であり、私も魔法少女である。
「狙った獲物は逃さないっ!ラヴリーシリウス見★参!」
そしてご主人様は狼を召喚すると何やら叫ぶ。狼は姿形を槍に作りかえ高速で放たれスラッジへーロを穿いた。私がなりたかった魔法少女はここに在った。感動して動けない私にご主人様はそっと寄り添ってくれていた。
ーーーーーー
ようやく落ち着きを取り戻した私は話を聞くことにした。
「ショウが魔法少女だったのですね?そしてそれが秘密だと。」
「あぁ。そうなる。」
ご主人様は少女姿で応える。
「あの子を、又姪を救ってくれた心から感謝します。それで、その…」
私も魔法少女になりたい。いや魔法少女のはずだ。しかしなる方法が分からない。ご主人様はおそらく血統スキルで魔法少女になっている。血縁関係のない私では…。
「魔法少女になりたいか?」
確信をつかれた私はバッと顔を上げる。いつの間にか俯いていたようだ。
「なりたいです。しかし私にはその方法が分からないのです。」
必死に魔道具を集めても変化は訪れず奴隷にまで落ちてしまった。
「そうか。ならば俺を見ろ。」
ご主人様と目が合う。
「契約」
そう言うと二人の間に魚のような生き物が姿をあらわす。私は思わず手を伸ばすと魚に触れた。そこから新しい力が流れ込んでくる。力の奔流が無くなると私は呟いた。
「変身」
身体が作りかえられていく感覚はするが痛みは小さい。骨の軋む音が収まると動けるようになる。自身の体をみると大分小さくなっている。歳は10くらいに見え、訓練で日に焼けていたはずの肌は真っ白になっている。髪の毛は紺色から銀に変わりゆったりとしたウェーブを持ちながら腰まで伸びている。
50歳を越える大男がこんな小さい少女に変わるとは思いもしなかった。そしてもう一段階変わることで遂に
「換装っ!!」
何も起きずポカンとしているとご主人様は白い湾曲した杖と青いブローチ、イヤリングを換装登録しておけと渡してくれた。
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