第14話

 山岳地帯に入り1ヶ月が過ぎた。

 火魔法が使えるようになった事がついに相棒にバレてしまったが短い前足をたしたしと抗議するように叩いてくるだけで許してくれた。この世界に来て一番良かった事は相棒と会えた事だと思う。見た目はかわいさ全振りでこっちの意志をくみ取ってくれる頭の良さもある。世話もほとんどかからない。



 あとはこの1ヶ月で街の様子が変わった。

 子どもたちに杖型の魔道具(先端が光るだけ)やふりふりした服が流行りだした。都築が地球でのグッズのアイディアを商会に売り成功したようだ。しばらくして学生PTが活躍している噂が届くようになってきた。繁華街はもう出て防衛線まで出ているらしい。儲けで装備整えたのか?羨ましい。


 そして魔法少女ブームだが青領全体にひろまってきているらしい。子ども達が興味を持ってというより大人たちが習い事のように女児に勧めているらしい。というのも、青領は脳筋領のため兵士になりたがる子どもはかなり多い。だがその弊害か性別関係なく前衛物理職に就きたがる。派遣された学生達のバランスが後衛に偏っていたのもその為である。

 指揮官も作戦を考えようにも部下は突撃したがるし何なら自分も突撃したい。

 そんな状況なので魔法少女ブームにのっかり後方支援、遠距離攻撃部隊を強化し戦闘を優位になるよう育成したいらしい。


 その流れを切らさないように魔法少女を捜索・軍のPRにスカウトするという話も聞いた。これもあいつらの発案な気がする。タレントを使った広報活動なんてまだないよな。

 俺のおかげで儲かったんだから寄越せと言いたい。妬ましい。



 街での様子はそんな感じだ。

 ダンジョン攻略だが魔法の事で怒られてからも対単体になるように相棒がほとんど倒してくれている。なので落ち着いて魔法での戦闘経験を積めている。そうして攻略しているうちにボスの所まで到達していた。


 スラッジへーロという名前の魔鳥らしい。翼から毒を分泌しそれを混ぜた水魔法を上空から放ってくる。威力や毒性は低いが経口摂取により目眩と視力の低下を引き起こす。

 端的に言うと紙耐久、低火力だけど回避力が高くて命中デバフを持ってるうざいやつ。


 なのだが魔法少女時の必殺技と相性が良すぎてその強味を見せる機会を得られなかった可哀想なキャラになってしまった。

 ボス階層は1PTずつしか入れないので人に見られる心配もないため倒しやすい。

 乱獲するうちに変身や必殺技演出に慣れてきた自分が怖い。俺は男、俺はおっさん。精神が肉体に引っ張られるという物語もあるが小さくなったからといってチビッ子と仲良く冒険とか好きになっちゃったとか自分がそうなると恐ろしく感じる。元の姿があるから自分を維持出来ているのか、あるからこその葛藤なのだろうか。おっさんと考える故、おっさんで在る。昔の偉い人もそんな事を言っていた気がする。そういう事にしておこう。



 そして別の悩みがボスドロップとスキルにも発生した。ボスドロップは期待…ではなく予想だな。予想していた通り魔法少女の新たな衣装シリーズだった。だが換装に登録出来なかったのである。相棒は火の精霊だから水魔法使う鳥からの衣装は相性が悪いのかという推測もたつがここでスキルの悩みが関わってくる。

 スキル名は『契約』。相棒2が産まれると思ったが半分不正解だった。

 産まれたのはイルカのような姿の水精霊。どうやら適性のある人物に反応しその人との契約がなれば新たな魔法少女の誕生となるらしい。

これは俺の正体を教える事と同義となるので気は進まないがいざという時のため適性者だけでも捜索することにした。

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