第12話
決着から時を遡ること数分、地下では泣き疲れて寝ている子もおり静寂に包まれていた。
連れてこられた時、ターニャは偉そうな人から「お前、珍しい髪色をしているな。ワシの所で働かせてやろう。」とか言われていた。けど孤児院のみんなと一緒にいたい。あんな人いやだよぅ。
年下の子たちが落ち着いたからか張っていた気が緩み嫌な想像をどんどん膨らませる。
俯いていると思わず涙が滲んできた。
(院長先生、みんな…)
そうして過ごしていると上の方から微かながら怒鳴り声が聞こえてくる。あの偉そうな男の声だ。もう連れてかれちゃうのかなと思うと怖くて体が動かない。
怒鳴り声が続くと急に爆発みたいな音が聞こえてきた。天井から土がぱらぱら降ってきて揺れてる。
(何が起きてるのか分からないけどとりあえず逃げなきゃ!でも逃げる場所がないよ!どうしようどうしよう)
焦っていると異変に気付いて小さい子も起きてきた。寝る前の状況を思い出したのか不安そうな顔に変わっていく。少しでも紛らわせようとみんなで隅っこでかたまる事にした。
急に音が大きくなったと思ったらあの男が地下に降りてきて騒ぎだした。
「なんだあのガキは!ワシは貴族だぞ!」
隅に寄ってて良かった、あんな人の近くにいたくない。そう思っていたら「ぷぎゅ」と何かが潰れる音がした。様子をみるとウルフっぽい動物が男を倒してた。
(魔物?牢の中にはこないよね?上はどうなってるんだろ?)
変わり続ける状況に混乱していると魔物が鍵を壊し侵入してきた。小さい子だけでも守らなきゃと抱きしめる手に力がはいる。
魔物は少し離れた所で伏せると喉をごろごろと鳴らした。襲ってこないし悪い魔物じゃない?そう思ったのは私だけじゃなく魔物に近付く子がいた。
呆気にとられ動けないでいると魔物が起き上がった。危ないっ!って注意も出来ずにいたら魔物は近付いた子の頬を舐めた。そのまま鼻を擦り合わせたりくぅんと鳴いたりしてかわいい。他の子も近付くと舐められたりしてわぁと声があがる。さっきまで不安そうだった空気は楽しげな雰囲気になってた。
みんな魔物さんと遊んでるけど上の様子も見なきゃ。牢から出て階段を登ると近くに私たちを拐った男が2人倒れていて驚く。もう1人いたはずと思っていたら頭上にいきなり綺麗な夜空がひろがった。
「ラヴリーシリウスアローっ!!」
女の人の声が聞こえそちらをみると最後の誘拐犯が倒れるところだった。
これで私たちは助かったんだ。自然とそう思えて安堵する。
助けてくれた人にお礼しなきゃと声のした方を探すとかわいいドレスを着た女の子が慌てた様子で走り去っていく背中を見つけた。
「助けてくれてありがとー!」
咄嗟に大きな声でお礼を言う。ウサ耳がピクリと動いたし聞こえたかな?
「わんちゃんいなくなっちゃったー」
地下からそんな声が聞こえみんなの所に戻ることにした。
しばらくして爆発音を聞きつけた衛兵さん達がやってきた。三人組のこと、偉そうな男のこと、爆発音のこと色々聞かれた。
説明を終える頃には街の子の両親や院長先生が迎えに来てくれていた。少ししてから最近孤児院に寄付してくれるおじさんも来る。みんなの事ガキって言うからちょっと嫌い、だったけど口が悪いだけでいい人かも?
なんて少し見直していた。
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