第11話

 小屋に突入すると、この都市に来た際に入門税を騙し取った3人組の冒険者と身なりの良い男が驚いた様子でこちらを見ていた。こいつらギルドで見ないと思ったら人攫いなんかしてたのかよ。


「キサマっ誰だ⁉︎珍妙な格好をしたやつめ!」


 見張りはどうしただとかワシは貴族だぞ!とはしゃぐ男を他所に冒険者達は静かに抜刀し構える。確かCランクとか言っていたか。門の前で適当に雑談していた時は中堅くらいかと大した事ないように思えたが冒険者として活動を始めた事、敵対する圧迫感で格上だと言うことが嫌でも伝わってくる。

 どうやら貴族を気にして即斬りかかってくる事は無いようだ。巻き込まれる範囲に子どもがいなかった事が確認できた俺は相棒に指示を出す。


(火の弾幕をはってくれ!奴らの視覚を封じたい)


 頭上に熱気を感じるとすぐに火の球が雨のように降り注ぐ。冒険者は腕や盾で顔を守り、大き目の火球は剣で打ち落としたりと体を張って貴族を火から守る。そうして貴族の男はその間に地下へと避難していった。


 MPも残り僅かとなり弾幕は打ち止め。数を重視した弾幕では致命打にならず3人とも健在のようだ。しかし相棒は俺の指示に完璧に応えてくれていた。

 室内は煙に包まれ不用意には動けないほど視界が閉ざされていた。俺は犬のうち1匹に貴族の後を追わせ無力化、そして地下に囚われて居るであろう子ども達の護衛を頼む。

 残り3匹は煙に乗じて冒険者達を襲わせる。索敵に優れた犬達は視界に頼ることなく敵の元へと飛び込む。冒険者達の悲鳴と倒れる音が聞こえた。


(まともに戦って勝てるわけないからな。)


 煙が晴れるのを待ちながら今回の戦いについて考える。索敵を活かした不意打ちと視界を奪っての暗殺は思っていた以上に刺さるな。今後のダンジョンアタックはこれを主軸に考えてもいいかもしれん。MPの縛りはレベル上げでどうにかなるだろう。


 煙が晴れてきたので思考を打ち切る。こいつらどうするかな、と近付くと横からいきなり犬に体当たりをされた。えっ反抗期?とそちらを見ると犬が光りの粒子になって消える所だった。1人起き上り攻撃してきたようだ。勝った気になって油断していた。

 めっちゃ血走った目で睨んでくるやん。

 とりあえず犬を1匹けしかけるも一刀のもとに断ち切られた。


 MPはほぼ尽きかけ、犬も護衛に遣ったのを除いて残り1匹。相手はボロボロだけど怖いし…

 意を決し俺は杖を構え決めポーズをとる。否、必殺技を使おうとしたら勝手に体が動き出したのだ。

嫌な予感が当たり次の展開に憂鬱になる。


「未来を照らすシリウスの光よ!」

 杖をバトンのように回転させ上に投げると天井は元から無かったかのように夜空がひろがる。敵は先程まで敵意に満ちていたはずなのに動かない。心做しかぽかーんとしている。


「私に力をかしてっ!ラヴリー!」

 回転をピタッと止めた杖に光が集まりハートを形作る。あぁ恥ずかしい…敵がぽかんとする気持ちは誰よりもわかるよ。


「シリウスっ!!」

 光で出来たハートに猟犬が飛び込むと形を矢へと変える。大きさを考えると槍と言ってもいいかもしれない。


「アローっ!!」

 やっぱり槍じゃなかった。矢だった。でも鑑定では槍ってなってたような?

 そうして矢が発射される、と敵も見とれている場合では無いと回避行動に移る。

 矢にはホーミング機能もあり追尾していく。

 そういった効果の魔法もあるため回避を諦め打ち落とすことにしたようだ。

 ポーズをとったまま動けない俺はその様子を冷静だなーと眺める事しかできなかった。

 そして矢と剣がぶつかると思ったが剣をすり抜け冒険者の体を貫いたのだった。

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