第9話
SAN値回復のため暫く引きこもっていた。孤児院に顔を出さなかったのでガキどもが心配して宿まで訪ねてきたがスルーを決めこむ。足音を立てない様に気をつけ扉前に移動し開かないようにもたれ掛かる。
「ウッサン元気かー?生きてるかー?」
「あれ?あかねー!」
がちゃがちゃと扉を開けようとしているのを見て笑いを堪える。あっこらっ!扉を蹴るな!と思っていると諦めて帰っていった。
元気も出たし子ども達をからかいに孤児院に行くか。土産に兎肉でも持っていってやろう。明日からそうしよう。
それから3日経ち孤児院に向かう。心配をしてくるガキどもは少しかわいいが何もないと分かるとやはり生意気になる。年少の男児達は殴りかかってくるので適当に付き合いいなす。女児達は相棒に夢中だ。
カンカンと木の棒が打ち合う音がしばらく続いた。
夕方になりそろそろお暇するかと帰り支度をしていると商店街の手伝いに出ていた年長の孤児たちが帰ってきた。しかし様子がおかしい。みんなぜぇぜぇと肩で息をしながら半泣きでおろおろしている。
「院長せんせー、院長せんせーに…」
「どうしよう、ねーちゃん達が」
と、何かを伝えようとしているが相当焦っているのか要領を得ない。何かが起ったのが伝わり年少の孤児たちも不安そうにしているので院長を呼んできてもらいこの場から離れさせる。そうして院長がやってくると事情が少しずつわかっていった。
年長の孤児たちは仕事に出ていたが帰りに人気のない所を通ったらチンピラにいちゃもんをつけられたらしい。相手をしていると「きゃっ」と悲鳴が聞こえ振り返ると女児達が担がれ連れ去られて行った。慌てて追いかけるもスラムの奥の方に逃げていき見失ってしまった。途方に暮れるが周りに浮浪者の視線がある事に気付く。孤児院に入れた人間に対し浮浪者達はいい感情を持っていない。その事はわかっているので途端に怖くなり逃げるように帰ってきた。と言うのが事の顛末のようだ。院長は衛兵に連絡を。と指示を出し居ない子の確認をしている。
ターニャちゃんと2人の女児がいなくなっている事が判明した所で俺はその場を離れる事にした。
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