第5話
ダンジョン1階層へと転送され目の前には草原が拡がっていた。一瞬で景色が変わった事に驚くが『まずは周囲の確認する事』
ウミズに教わった事を実践する。門に入ってきたはずだが後ろを見ても草原風景で門の姿も形もない。聞いていた通り脱出するには魔法陣を差がなければならないらしい。
次に装備の確認だ。スライム相手には使わなかったが黄都で買った鉄の穂先のついた槍と猪皮の胸当。穂先も胸当のベルトもしっかりと固定してある。
(大丈夫そうだな、うん、きっと大丈夫…)
初めての事ばかりで不安はあるが進まなければ何も始まらない。周囲にこれといった物もないので草の丈が低く人の通った跡のある西側へと歩いていく。しばらくすると草が揺れ唸り声が聞こえた。槍を構え様子を伺う。
二足歩行している中型犬くらいの大きさの魔物『コボルト』の単体がこちらに牙を剥き迫ってくる。
顔を狙って突くが空振り、迫る牙にてんぱり槍をめちゃくちゃに振り回すと運良くぶつける事が出来た。倒れているコボルトにとどめを刺すため槍を振り下ろし頭を潰した。
コボルトが光の粒子となって消える。その後には肉が落ちていた。
これはダンジョン特有の現象らしく死んだ魔物に応じたアイテムを残し消えるらしい。
今になって心臓の音がうるさくなってきた。運良く振り回した槍が当たったが中型犬サイズとはいえ魔物だ。噛まれたら軽い怪我ではすまないだろう。
冷静に考えれば目測うんこの俺が突きを放った所で当たるわけがない。そもそも槍を選んだのはリーチが長い事もあるが長さや取り回しが箒に似ていたからだ。色々な武器を試したが武器屋の店主も槍の足払いだけは唯一まともな範囲と言っていた。
・足払いから振り下ろし。
・足払いを失敗したら距離をとる
この二つを基本戦術に攻略していこう。
1階層は単体でしか出現しないのか20体ほど倒した所で依頼分の毛皮を集めることが出来た。ついでにレベルも6まで上がり新たなスキルがはえていた。
スキル:鑑定、道具箱
道具箱を使用すると意識すると目の前に箱が現れた。うん、これ俺がこの世界に来た時閉じ込められていた掃除道具入れのロッカーだね。箒にチリトリ、バケツに雑巾、最近は見なくなった黒のビニール袋。皮肉かと考えていると箱が消えた。
次に鑑定を使ってみる。ステータスパネルのようなものが開き詳細を見ることが出来た。
★鑑定:人物・アイテム等の詳細を表示する能力。ステータス差や阻害能力によって失敗する。
★道具箱:道具なら何でも収納出来る箱。生き物はスキル持ち主を除き不可。初期アイテムは本人使用のみ可。
箒:摩擦力を無くして掃ける。
チリトリ:箒で掃いた物が自動で集まる。
バケツ:水が湧き出る。飲用には不向きだが飲めないこともない。
雑巾:磨くとワックスをかけたようにツヤがでる。
ビニール袋:容量を気にせず何でも入る袋。
見た目の印象からがっかりしたがとてつもなく有能スキルだ。手間のかかるインベントリといった所か。袋にコボルトのドロップを入れ、あとは帰るだけなので探索中に見つけた魔法陣で帰還した。
帰還後、孤児院に納品に向かう。依頼を受けた冒険者だと伝え院長の元に案内される。
「コボルトの毛10枚です。ご確認下さい。」
「はい。…えぇ確かに。これで冬が越せます。ありがとうございました。」
院長である老婆はそう言い頭を下げる。
(冬が越せる?何のためにあんな低品質な毛皮を集めるのかと思ったが暖を取るためなのか…)
ついでの様に受けた依頼だが孤児院の運営は良くないらしい。子どもは好きではないが凍える子やひもじい子を見ぬふりをするのは目覚めが悪い。
「コボルトの肉もあるが食えるか?臭みが強くて美味そうではないが…」
「ありがとうございます。子どもたちも喜びます。」
完了証明を貰い報告し今日は休むことにした。
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