第3話

 青領へと続く街道を三時間ほど進んだ。

 その間現れた魔物はスライムが十匹。最弱の魔物と言われるだけあって簡単に倒せる。

 にじり寄ってサッカーボールキック。これでワンパン。

 一度、空振って仰向けに倒れた時は体力がレッドゾーンに突入した気分だったが。

 転移に巻き込まれるきっかけとなった長谷川ちゃんも避け損なうし自分の目測は信用しないように気をつけよう。

 決意を新たにお散歩気分で進んでいく。



 もう三時間程歩くと日が大分傾いている事に気付き市場で揃えた野営道具をひろげていく。

 焚き火をつけ折りたたみチェアに座ってそこらの枝をナイフで削って火を絶やさないように気をつける。


 焚き火を見ていると心が落ち着くと誰かが言ってたな、ふっ。

と気取っていたら風向きが変わりむせた。枝も水分をまだ含んでいたらしく黒い煙を全身に浴びた。


「虫除けだから」


 と誰に言い訳をしているのか涙目になったが腹ごなしをし眠ることにした。



ーーーーーー


 虫がいなかったのか煙の効果か虫刺されもなく夜を越えることが出来た。

 異世界の虫がどんな病原菌を持っているかわからないからね。煙は結果オーライだったな。


 朝食に目玉焼きパンを食べ野営道具を鞄につめこんでさあ出かけるとするか。と気合を入れる。



 歩き出して四日目、街道も寂れはじめ馬車とすれ違う事も減ってきたので少し道を外れ小さな泉で休憩をとることにした。


「はぁ…気は進まないが試すしかないよなぁ。変身だけならイケメンになったり痩せたり出来るだろうに(少女)ってなんだよ」


 そう独り言ちるもこれ以上後回しにするのも何も解決しないのでスキルを使うことにした。


(変身っ)

 ぼそっと唱えると身体が別の物に置き換わっていく。


 肉が押しつぶされるような激痛も成長痛のようなギシギシとした鈍痛もなく、筋肉が少し強ばってるかな?くらいの違和感で変身する事が出来た。


(う〜ん。股間が何か寂しいのと頭が何か重い?胸は…まぁ少女だしな。後は泉で顔でも見るか)


 身長も縮み性差なのか少し歩きづらいが泉に顔を映すことに成功した。


 そこには派手ではないがひっそりと人気がありそうな可愛い顔立ちの中高校生くらいの少女がいた。


(自分だと思うと何とも思わないな。俺カワイイでもするくらいしか使い道無さそうか。まぁいいか)


 歩き続けて熱をもった足を癒そうと泉にいれ何気なく動かす。

 するとバシャっと水柱が上がる。道中にスライムを倒し続けたとはいえ俺のSTRの成長率はEだったはず…

 ふと思いステータスを開く。



ーーーーーー


 出席番号:31

 名前:マジカ ショウ

 職業:少女

 LV:4

 HP:C

 MP:B

 STR:C

 INT:S

 VIT:D

 DEX:D

 AGL:E


 スキル:変身解除、換装(使用不可)


ーーーーーー


「えっ」


 思わず声が出た。

 LVが追加されているのはスライムキックのおかげだろうが、全てのステータスが一段階以上あがっている。INTに至ってはDからSと四段階も。

 変身で若返った事か出席番号の追加で聖獣の加護を得たのだろうか?


 生徒達はSが複数ある者もいたため追いついてはいないが差はかなり埋まっただろう。

 スキルも変身解除と換装に変化している。使用不可となってはいるが変身だけでこれだけ強化されたのだから老後にも希望が見えてきたぞ!とほくそ笑む。


 しかし換装とは何だ?と凝視しているとステータスパネルに変化が起きた。


 換装:少女から魔法少女へと変身するスキル。手持ちのマジカルスティック・マジカルドレスに演出とともに変身っ!ショウちゃんはちょっぴりドジだけど努力家。ピンク担当。『貴方のハートをキレイにお掃除♡』



 ショウじゃねぇよ…

 俺は膝から崩れ落ちた。

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