サンタクロース危機一髪
神楽堂
サンタクロース危機一髪
今日は特別な日、クリスマスイブだ。
息子が寝静まったのを確認した俺は、プレゼントをこっそりと枕元に置きに行くことにした。
俺はプレゼントを手に持ち、静かに子供部屋の扉を開く。
し、しまった……!!
* * *
息子が起きていたとか、そういうことではない。
息子はいびきをかいてぐっすり眠っている。
そこは問題ない。
息子は以前から、サンタクロースを見てみたいと言っていた。
そして、今年は作戦がある、とも言っていた。
それが、これだったのか……
子供部屋にはなんと……
監視カメラが設置されていた。
監視カメラは、簡易的なものなら3000円くらいで手に入る。
息子の小遣いでも十分に買える金額だ。
息子は、どうしてもサンタクロースを撮影したくて、ここにお金をつぎ込んでいたのだった。
赤いランプが点滅している。きっと録画中なのだろう。
今更、クリスマスカードなどでカメラの視界を遮ろうにも遅すぎる。
もう、俺は写ってしまっているだろう。
万事休す!
どうする?!
* * *
翌朝、息子は監視カメラからSDカードを抜き、パソコンに入れて動画を再生した。
俺も一緒に見ることにした。
「あれ? パパは写っているのに、サンタさんは写っていない」
「そうか? 俺は昨日の晩、サンタさんに会ってちゃんと話をしたぞ?」
「そう……だよね。パパの姿と声はちゃんと入っているんだけど、サンタさんの姿が……写ってない……」
「パパもサンタさんを撮影したんだけど写ってなかったよ……。サンタさんは写らないのかな? ははっ、ははっ……」
「……う~ん……撮影失敗か……」
俺は冷や汗をかきながら、昨晩のことを思い返していた。
* * *
プレゼントを手に持って子供部屋に入った俺は、息子が設置した監視カメラに気づいた。
俺は動揺を隠しながら後ろを振り返り、こう言った。
「あ、はい、プレゼントはここに置けばいいのですね。サンタさん、毎年ありがとうございます! あ、そうそう、息子がサンタさんを撮影したいと言っていまして……え? 撮影OK? そうなんですか! じゃあ、このスマホで撮影させてください……カシャ!……あ、次、ツーショットいいですか? え? 本当にいいんですか! 嬉しいです! ……はい、ではいきま~す……カシャ! 明日、息子に見せて自慢しますね! サンタさん、ありがとうございます! お茶でも飲んでいきませんか……って、無理ですよね……次はどちらへ? ……あぁ、木村さんところですね。角を右に曲がってすぐです。大きな犬がいるので気をつけてくださいね。ではお気をつけて……」
* * *
「ほれ、俺のスマホでも撮影できなかったぞ」
部屋の壁の写真と、画面の半分に俺の顔が写った自撮り写真を息子に見せた。
「……そっか、パパのスマホにも写らなかったんだ……来年は何か別の方法を考えるよ……」
「お、おう……そうだな。そのときは、パパにも相談してくれ。パパもサンタさんの写真、撮ってみたいから」
「うん!」
ふぅ……
これはなんとかなったということなのか?
来年、息子が何をしてくるか分からない。
十分に警戒しておかないと。
しかし、俺の一人芝居もなかなかのものだな。
……いや、息子がまだまだ幼いだけか。
とりあえず、今年はしのぐことができた。
* * *
息子は自分の携帯を取り出すと、俺にこう言ってきた。
「来年のクリスマスまで待たなくてもいいや」
「?!」
カシャ!
息子は俺の隣にやってくると、自分の携帯でいきなりツーショット写真を撮ってきた。
「サンタさんとのツーショット写真、撮れた~!!」
お見通しだったのか……
俺にとっての特別な一日、それは息子の成長を実感した一日であった。
メリークリスマス!!
<了>
サンタクロース危機一髪 神楽堂 @haiho_
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