第5話 フェア=ミドガル国立学園
「学園?」
屋敷で生活を始めて少し。
毎日ロリコンに追われてメンタルが持たない。
そんな日々に、アーモスが「学園は如何するの?」と口にした。
「学び舎だよ~。4年生まであるんだ。ルイも行ってるけど、手抜いてるし。今は冬休み中」
「……ぁるじ、きく」
駆けてルイの元へ向かう。かくかくしかじか説明すると、ルイは不敵に笑った。
「ふーん、そういうことならいいよ。学園は何一つ楽しいことはないし、ほんとにいいの?」
「……ぁるじ行く、ルアもぃく」
奴隷は何処までも主一筋。
表情筋が緩んだルイは、許可を出してくれた。
素早くアーモスの所へ戻ると、よしよしと頭を撫でられる。
素早く手を振り払い、威嚇の態勢を取る。最早条件反射だ。
「わぁその顔は
裏ワザとやらを使って、それほど簡単に試験免除ができるだろうか。眉間に
何が何だか分からず、周りの景色がどんどん変わっていく。色が混じり合ってくらくらした。
「あっはっは。楽しいでしょ」
「……吐く」
「やめて」
笑顔でストップをかけられる。
着いたところは、それはもう
「フェア=ミドガル国立学園だよ。貴族専用で、
アーモスは受付の令嬢へ話しかけた。
「ねぇ、この子を試験免除で入学させてよ。おねが~い☆」
茶目っ気たっぷりにアーモスが手を合わせるが、令嬢は首を横に振る。
「現在学園では、皇族以外試験免除が認められておりません」
「うわぁ、辛辣。まあ裏ワザ使ったら
ルーちゃん見ててね、とはしゃぐ父に拳を叩き込んで、茶番を見ていられずに顔を背ける。
「はいこれ」
ガチャリと金属の音がして、視線を戻すと其処には大量の金貨があった。
「全額学園に寄付してあげるから、この子を入学させて? 勿論試験免除で」
「ふえっ⁉」
その額に声を漏らす令嬢。ルアはその状況を遠目で眺める。
「……(¥)」
「あ、そう言えば名乗ってなかったっけ。僕はアーモス・アズライール。ほら、『死の天使』って知らなーい?
「ひぃっ」
名を使って、その権力を最大限に発揮していた。アズライールは『死の天使』の二つ名を有している。実在する天使の名だ。
「……ぉどし……」
「この子は僕の娘だよーん。ルア・アズライール。デクランから溺愛されてる子ー」
金で物を言わせてからの、家名の威光を存分に使った上での脅し。
ルアはドン引きしていた。裏ワザとはこのことなのか。
「申し訳ありませんっ、貴方様がアズラーイールの御方だとは露知らずっ——」
令嬢が青くなる。
「僕に盾突く君は、い~らない」
アーモスがバッと手を伸ばす。細い黒の糸が宙を舞って、令嬢の体に巻き付いた。糸は変形して、刃になった。彼女に視線を移すと、もう首が落ちている。ルアはそれを傍観した。
「
振り向くと、髪を高く結い上げ目を伏せた女性がいた。周りの護衛や服装からして、学園関係者だろう。
「どうか、ここまでに」
「ルーちゃん、この人は学園長」
こそっと教えられた情報に、ルアは何も答えない。
「あー、まあ。これ以上手を汚すのも面倒だし、もう止めといてあげる。回収するの面倒だから金貨はあげるよ。その代わり、娘は学園に入学させてね☆」
「承知致しました」
こうして事は丸く?収まった。
「こちらの方がよくてよ」
「いいえ、この方が」
母と祖母が、二種類ある女子生徒用の制服で、ルア用にはどちらのデザインにするかと争っている。
「……((*´Д`))」
退室しようとすると、二人は一斉にルアへ手を伸ばした。
あっという間に着替えさせられ、彼女達の着せ替え人形にされる。
「リボンを付けたらよいのではなくて?」
「スカートは膝丈にしましょう」
もう如何にでもしてくれと、ルアは脱力した。
そのままあれよあれよという間に入学を迎え、ルアはルイの後ろに張り付いて学園を散策する。
この学園は学年ごとにABCとクラスがあり、成績でクラスを分けている。ルアは実力不明なのでBクラスで、ルイはAクラスだ。Aクラスはルアの教室から遠く、ルアは
「……や」
「はい、大人しくして?」
じたばたするが、主の一言でぴしりと硬直する。そんな二人を遠巻きにする生徒。
ルアの学園生活は孤立から始まり、孤立に進み始めた。
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