第3話  少女の名前は

 シャーロットの指示で、ルイの前にしゃんと立つ。

 ふわっとした黒の服に、白色のミニスカート。

「仮にもわたくしの娘が、薄汚くては示しが付かないでしょう」

「……ぉまぇ、ぁるじ、ちがぅ。むすめ、ちがぅ……」

わたくしはルイの母でしてよ。主の母の命は聞くものではなくて?」

「……?(こてん)」

 何気に相性がいいのかもしれない。

「ふうん、そうやって僕の奴隷所有物を奪うつもり? ……じゃあ命令だ。〝君は、今後一切僕以外の者からの指示を聞いてはいけない〟。分かった?」

 笑顔でルイは問う。

「……(こく)」

 奴隷は従順だ。

「君は僕の駒に過ぎないけど、表では妹として振舞ってくれればいいからね」

「……ぃもぅと」



「そう、妹だよ。〝ルア〟」



 ルア。

 奴隷は、主が変われば名も変わる。奴隷=愛玩動物ペットのこの世は、飼い主が変われば新たに名付けされるのは当然だという。前主は名づけをしなかった。

 名とは、ある種の呪いだ。期待を乗せた願望でもある。『ルア』にも、それは色濃く含まれていた。

 永遠とわに従順であれ。

 その呪いは、ルアに絡み付ける。

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