こうして二人は全力を出す
映像を観測して、指示を出していると突然魔王城内部で神力を感じた。それが明日香と星見先輩がいる場所だと特定するのに時間はいらなかった。
すぐに明日香の無事を確認しようと魔術を使用して反応を確認した瞬間、部屋の壁に吹き飛ばされて地面に倒れるのを認識した。
「……あ?」
自分でも信じられないぐらい低い声が出る。部屋にいたメイドや兵士が腰を抜かし意識を失ったものもいる。
「《
そうして自分の身体を改造して最高の状態に整える。直後転移を使い明日香の元へと向かった。
戦闘を開始して数分も経ってない頃に私の結界に反応があった。
明日香ちゃんのいる部屋に神が降臨した。その事実を飲み込んだ瞬間に理性が消えてしまいそうなぐらいの感情の波に襲われる。
「隙あり!」
戦っていた神がそう言って腕を伸ばしてくる。
私はその腕を無造作に掴んで握り潰した。
「……は?」
せめて綺麗に殺してあげようと思っていた、けどもうそんなことは気にしていられない。私の大切な妹(これからなる予定)に手を出した愚か者がいるのだ。優先順位はそちらが上だ。
そして魔王城の方で和くんの反応が急激に膨れ上がるの感じる。彼も当然そうするだろう、だからと言って私が行かない理由にはならない。
「このっ、はな——」
「《うるさい》」
ただの一言でソレを消す。つづいて魔王城の明日香ちゃんがいる部屋へと転移した。
ーー明日香ーー
わかりやすく本気で怒っている兄と姉が目の前に立っている。その安心感からか少しだけ意識が霞む、けど最後まで見なきゃと意思を込めて目を開く。
「咲希、こいつは俺が殺す」
「和くんは下がってなよ、私が殺すから」
「あ?俺の妹に手をだしたんだから俺だろ」
「私の妹でもあるんだから私が殺すに決まってるでしょ?」
訂正、意識を失ってもいいかもしれない。なんでもいいから早く倒して手当をして欲しい。
そんな願いは二人にではなく敵に届く。
「お前ら何者だ……」
ふらふらと立ち上がる敵に二人が目を向ける。
「早い者勝ちな」
「賛成」
その言葉の直後二人の姿が消えて同時に星見先輩の身体を剣と腕が貫いた。
「私が早かった!」
「俺の方が早い!」
かっこよさなんて微塵もないのに目が潤んでしまう。
「って明日香ちゃんの治療しなきゃじゃん!」
「……咲希、あれは任せた、治療してくる」
「はーい」
お兄ちゃんが近づいてきて手をかざす。それだけで全身の痛みが取れて体が動くようになる。
「もう痛いところはないか?」
「……うん、ありがと」
「ごめん、俺がしっかりしてれば怖い思いをさせずに済んだ」
「いいよ……助けてくれたし」
兄が来てくれただけで恐怖はなくなって安心からか力が抜ける、それと共に急な眠気に襲われて瞼が重くなる。
「目が覚めた時には全部終わらせとくから」
「……ぅん」
どうにか返事だけして兄に全てを預けて私は意識を手放した
ーー和樹ーー
さて、この戦局をどうしたものか……と十秒ほど思考する。そうして方針が決めまずは腕の中で眠る明日香を安全なところに移そうと転移を使う。
「……魔王様、突然転移で部屋の中に現れるのはおやめください」
「緊急だ、許せ」
「はぁ。それでご用は?」
「明日香をしばらく頼んだ」
「承知しました、必ずや妹君をお守りいたしましょう」
俺が明日香を預けたのは幹部の一人、メイヴィス。特に守ることに長けているやつで防衛、護衛任務は全て完遂している。故に明日香を預けるには最適なやつだ。
「魔王様はこの後どうするおつもりで?」
「決まっているだろう?」
「……そうですね」
言うまでもなく俺の意思を察したメイヴィスは明日香を預かると一歩下がる。俺は再び転移を使い場所を移動する、今度は戦闘が終わっているであろう咲希のところだ。
転移して最初に入ってきた情報は赤、だった。
視界全てがどす黒い赤で染め上げられていて、元々の光景を想起できないほどだ。明日香のいた部屋から落ちた方向的に城内広場の森の中のはずだがこれではまるで拷問場のようだ。
「あれ?この程度で根をあげるの?」
「すみませんすみませんもうころしてくださいいたいのはいやですしにたいですはやくころして———」
「だーめ♡」
絶叫が響く、狂気を纏った咲希が星見先輩の身体に入った神を拷問している。拷問場という表現はあながち間違いではなかったかもしれない。余計なことを一瞬考えてしまったが本題は別にあるし時間も限られているのでまずは咲希を説得するところからだろう。
「咲希」
「和くん?明日香ちゃんは?」
「任せれるやつに預けてきた」
「そっか、私はこれをもう少し虐めるから先に行ってていいよ?」
「いや、一緒にいくんだよ。俺たち二人で公国アンドルを滅ぼすぞ」
「……へぇ」
「市民も、軍人も、王族も、勇者も全て殺す。文明の跡すら残さない殲滅戦だ。やるよな?」
「もちろん、私たちが守り切れなかったとは言え明日香ちゃんに手を出したんだからね」
「作戦はすぐに始める、準備はいいな」
「いいよ」
「じゃあ……行くぞ」
咲希はあっさりと拷問をしていたやつに興味を失い腕を一振りさせて消滅させる。それを確認してから俺と咲希は最前線、エキドナのいるところへと転移する。
「エキドナ。アンドルの領土全てを結界で覆ってくれ。人も魔物も逃げなければそれでいい」
「……わかりました」
「不満そうだな?」
「めんどくさいだけですよ」
当然だな、と心の中で手を合わせる。公国アンドルは魔王国に敵対しているとは言え大国、勇者を召喚できるほどの国なのだ。その領土からあらゆるものが逃げ出せない結界を張るるのだからめんどくささの極みだろう。魔力が足りる、けどそれだけの魔力を扱うには危険が伴う、もちろん俺はエキドナを信頼しているしエキドナ自身失敗なんて微塵も想像していない、ただ疲労はするからこうしてめんどくさそうにしているのだ。
「張ったら言ってくれ。転移して二人で終わらせてくる」
「わかりました」
そうしてエキドナが目を閉じる、すると空に極大の魔法陣が現れる。
「わぁ……綺麗……」
思わず咲希がそんな感想を口にする。それもそうだろう、魔術を齧っているものなら誰だって感動するレベルの大魔術だ。魔法陣の各起点は宇宙にある星を利用し作られ魔法陣の核は俺たちの立っているこの惑星だ。そうした天体規模の大魔術、エキドナはそれを容易く扱う。
破壊することすらほぼ不可能な完璧な魔法陣そんなもの魅入ってしまうのは当然だ。
「咲希、もう始めるぞ」
「うん。いつでもいけるよ」
「じゃあ簡単に作戦を説明するぞ」
「うん」
「まず魔物を、次に軍人及び勇者、最後に残ったの。OK?」
「おっけー」
「魔王様それは作戦とは呼べません」
「知らん、できるからそれでいい」
「……結界を発動しますよ」
「ああ」
「お願い」
カッ!っと魔法陣が光ると公国を覆うサイズの結界が現れる。
「じゃあ行くか」
「うん。終末を始めよっか」
こうして女神と魔王による蹂躙が始まる———
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます