第16話 そう来たか ⁉︎

 陛下の執務室の前に再び戻って来た。


警備兵に取次いでもらい中へ入る。


「ジャスティン・リューデンハイム、只今戻りました」


「ああ、ジャスティン。調べて来てくれたか?」


陛下は席を立ち、僕の方へ近づく。


「はい、資料も出して貰いました」


僕は手に持った書類を上げた。


「それはご苦労だった」


陛下は僕に労いの言葉を掛けて、ニコニコしている。


「陛下、何かあったのですか?」


「ああ、ジャスティンはいい勘をしているね」


「婚姻の儀式で何か、、、?」


僕が総務部に行って帰ってくる間、2時間弱。


「まず儀式は問題なく終わった。しかし、儀式が終わった途端、マクスが消えたんだよ」


「は?消えた!?」


「恐らくキャロライン嬢のところにでも行ったのだろうと特に心配はして無かったのだが、その後、、、」


「その後、どうされたのですか!」


「2人で仲良く帰って来た」


「は?帰って来た!?えええ、僕のコレは、、、」


僕は手に持った資料を振る。


その様子を見て、陛下が笑う。


「ジャスティン。まだ犯人を捕えて無いのだから、それは必要だ。とりあえず、キャロライン嬢とマクスは無事に帰って来た。まぁ、良かったではないか。2人には休養を取る様に指示した。明日はリューデンハイム男爵と御夫人もこちらへ到着するだろう。小さな祝いの会を開こうと思う」


待って、待って、待って、、、全く話に追いついて行けない。


やっぱり、普通に帰って来られたんだ姉上。


あの距離を?


魔法が使えない僕には全く理解出来ない。


氷の刃も明日ここに集結する。


父上とは会ったばかりだけど、母上とは久しぶりに会う。


母上、、、どうか荒ぶっていませんように!!


「分かりました、僕も参加します」


「ああ、その時に今後の作戦も練ればいいだろう。ジャスティンもしっかり休んでくれ」


「はい、ありがとうございます。資料は機密が入っていますので、陛下にお渡し致します」


僕は手元の資料を渡した。


詳しい話は明日にしよう。


「では、失礼します」


「ああ、ご苦労さま」


ジャスティンが立ち去った後、国王は受け取った資料を見て頭を抱えた。


「また、マーベル、、、」




 王太子宮の湯殿は一階の奥にあった。


広いドーム天井の室内は、開放感に溢れていた。


床と壁は鮮やかなブルーと白のモザイクタイルで装飾してあり、お洒落で可愛い。


大きな葉っぱの観葉植物もこの空間にとても馴染んでいた。



 ここに着くなり、3人の侍女は私の服をサッと脱がし、一気に2日間の汚れを洗い流した。


私は疲れていたので、早く湯船に浸かれて嬉しい。


それも、かなり大きな湯船。


はぁーっ、気持ちいい!!


「お湯加減は如何ですか?」


侍女のサリーが、衝立の裏から聞いてくる。


「丁度良いわ」


じーっと浸かっていると、ふわっとした感じがした。


少しでも油断すれば、湯船でそのまま眠ってしまうかも、、、。


そんな気配を察したのか、侍女3人組サリー、マリー、エリーが私に近寄って来る。


「妃殿下、失礼致します」


3人は私をお湯から素早く引き上げ、衝立の裏のマッサージ台に運び、私をうつ伏せにした。


私はされるがままである。


優しいラベンダーの香りが漂って来た。


3人は香油を使って、テキパキとマッサージを始める。


あー、最高!!


申し訳ないけれど、絶対寝ますよ私。


もう無理、、、。




 意識が浮上する。


少し明るい、、、夜?朝?


あー、やっぱり寝落ちしてしまったのね。


瞼をゆっくり持ち上げる。


「うわーあ!」


目の前にマクスが居た!!


「ビックリしたー!」


心臓がバクバク言っている。


「そんなに驚かなくても、、、」


マクスは私の横で頬杖をついて寝っ転がっている。


いや、あんなに顔が近かったら、普通は驚くと思うけど、、、。


「あー、私お風呂で寝ちゃったのよね?今、何時?」


「2時過ぎくらい」


「マクス、眠たくないの?」


「そう来たか!?」


「明日に備えて寝た方が良いわよ。陛下も明日は内輪で食事会をするって言っていたし、、、」


私は起き上がって、マクスへ真剣に伝えた。


「キャロル、急な展開だったのは分かる。だけど、すこーし思い出してくれ。何故2人でベッドに居るのかを、、、」


ん?んんん?確かに今日から2人で寝るのよね。


周りの様子を見渡そうにも、ベッドの天蓋カーテンで遮られていて、何も見えない。


ベッドの上に居るのは私とマクス。


マクスは私の答えに何を期待しているのかしら?


「少しくらい、隙を見せてくれても良いのに、、、キャロル」


「すき?マクス、大好きよ」


目の前のマクスがゆっくり私に手を伸ばして、ギュッと抱き寄せた。


「ああ、愛してるよ。キャロル」


「うん、ありがとう。私も愛しているわ、マクス」


私もギュッとマクスに腕を回す。


「キャロル」


マクスが私を呼ぶ。


彼の腕の中から顔を上げる。


待ち構えていたかの様に、マクスは私の唇に軽くキスをした。


「マクス、、、」


恥ずかしいし、慣れないし言葉が続かない私。


「キャロル、可愛い。沢山キスしたい」


マクスが色気のある掠れた声で囁く。


言葉の出ない私はゆっくりと頷いた。


彼は再び、私の唇に自分の唇を寄せた。


最初は触れるキスを沢山。


額やこめかみ、首筋にも。


身体の中から、幸せな何かが溢れて、私たちを包んで行く。


マクスを愛しいと思う気持ちが止まらない。


気が付けば、私達は息を切らす程の深いキスを繰り返している。


マクスが何故寝ずに私を待っていたのか、流石に分かった。


我ながら鈍感過ぎた。


激しく抱きしめ合っている内に、薄いガウンはズレて、肌も露わになって行く。


マクスは私を仰向けにして、私の腰に結んでいたリボンに手を伸ばす。


私は咄嗟にその手を掴もうとしたが間に合わなかった。


マクスは解いたリボンを引き抜いて、後ろへポイっと投げた。


「えー、マクス、、、」


私の声で一旦、動きを止めたマクスは突然自分のガウンを脱ぎ捨てた。


違う、そう言う意味じゃない!!


目のやり場に困った私は両手で顔を覆う。


すると、リボンが無くなって、緩んだガウンの胸元を勢いよくマクスが開く。


「キャー!?見ないで!恥ずかしい!!」


マクスに両手を伸ばして、彼の目を覆う。


「綺麗なのに、、、」


マクスは私の手を剥がして、手の甲に優しいキスをしてから、天蓋のランプを消してくれた。




星が消える頃、2人は眠りに就いた。

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