第43話 動物園③
「お兄ちゃん見て見て!ぞうさん!」
「おー、可愛いね」
信弥くんはそう言って俺に象の形をしたご飯がのったカレーライスを俺に見せてきた。
信弥くんを肩車して回ること一時間ちょっと。
まだ見ていない草食動物もいたが、草食動物のエリアをだいたい見たところでお昼頃になった。
この動物園のいくつか屋内休憩所兼食事エリアがあり、俺たちはそこから近い中央付近にある場所で昼食を済ませることにした。
ちなみに信弥くんは先ほど言った通りカレーライス、俺と花守さんはスパゲッティにした。
「それにしてもすごい勢いで慣れましたね。信弥」
「確かにね」
花守さんはスパゲッティをフォークで巻きながらそんなことを聞いてきた。
俺はそれに同意した。
本当に最初の行動が嘘だったかのように肩車をしてから俺に慣れるのが早かった。
今ではお兄ちゃんと呼ぶまでになっている。
子供のこういうところって尊敬するような少しこわいような…。
「ねぇお兄ちゃん!」
「うん?」
すると、口の周りにカレーライスがついている信弥くんが俺に話しかけてきた。
俺は信弥くんの口周りを拭いてから話を聞いた。
「ん…。…あのね!次ライオン見に行きたい!」
ビクッ……。
信弥くんがライオンを見に行きたいというと目の前の花守さんが何故か揺れた気がした。
「花守さん?」
「は、はい。なんでしょう」
「今なんかすごい揺れなかった?」
「え、いや、その、き、気のせいだと…」
「そう?」
なにか変に誤魔化された気もしたが、それ以上は深く掘らなかった。
すると花守さんは信弥くんの方に体の向きを変えた。
「し、信弥、大丈夫?ライオンさんちょっと怖いよ?」
「うん!だってライオンかっこいいじゃん!百……なんだっけ?でも、王様なんだって!」
「………うぅ、わかったよ…」
花守さんはライオンは少し怖いと心配そうに言ったが、信弥くんは怖いよりもかっこいいが勝ってしまったみたいで見る気満々の様子であった。
花守さんもそんな信弥くんに負けた?のか悔しそうに見に行くことにした。
あと多分、百獣の王と言いたかったんだろうな。
俺はマップを見て、ライオンの位置までの道のりを把握する。
今いるところから来た道を戻って、草食動物をもう少し堪能してから肉食動物に入る。
ライオンはその中央に位置するところにあった。
俺は信弥くんのライオンに対する熱が冷める前にスパゲッティを完食するべく口に入れていった。
余談だがこのスパゲッティはすごい美味かった。
―― ―― ――
肉食動物はやはりというか迫力が違かった。
肉食動物はクマだとかオオワシだとか基本的に体格も威嚇とかも何にしても全体的に大きい。
だから肉食動物は男の子にとってとても人気なのだろうな。
「ねぇ見て、パンダ!」
肉食動物エリアに入った信弥くんはもう興奮を抑えられない様子で動物たちを眺めていた。
しかし、そんな信弥くんに対して花守さんは…。
「……」
先ほどまで信弥くんの隣に立っていた花守さんは何故か俺とその場所を変わると今度は俺の後ろに無言で立っていた。
「あの…花守さん、大丈夫?」
「あ、はい大丈夫です…」
大丈夫と言っとるが明らかにダメな感じがするのだが…。
本当に今更で悪いのだが花守さんってこういう動物苦手なのだろうか?
「あっ、ライオンいた!」
「あ、待って信弥くん」
しかし、今更気づこうとしたところで時すでに遅し。
信弥くんはここから遠くの場所にいたライオンを見つけ、その場所まで走って向かって行った。
とりあえず俺たちは一人突っ走ってしまった信弥くんの後を追う。
「信弥くん急に走ったら危ないよ」
「ごめんなさい……、でも、見て!ライオンかっこいい!」
信弥くんは謝った後、指を後ろの方に指す。
指の先にはこのエリアの目的であるライオンがすぐ近くにいた。
さすが肉食動物の代表的な動物。
俺が横になった時よりも一回りぐらい大きく、顔がすごいイカつい。
こりゃ、信弥くんが見たくないわけがないよな……。
「かっこいい……」
「あ、危ないよ信弥……」
久しぶりに見るライオンに懐かしさを感じていると、信弥くんがさらに近くに行こうとしていた。
それを見た花守さんは信弥くんを下がらせようと前の方に。
……ん?なんかすごい嫌な予感…。
俺はライオンの檻の手前にあった看板に目を向ける。
『吠えることがございますご注意下さい』
………。
「あの二人とも…」
俺はそこから二人に向けて声をかけようとする、が…
グルルルル…グァァァアア!!
「「きゃぁぁあ!!」」
ライオン選手先に行動を始め、花守さんと信弥くんはそれに対し悲鳴をあげた。
……俺の予想は色々と当たったようだ…。
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