第41話 動物園
「動物園?」
「はい」
花守さん告白&説教事件から休日を普通に過ごし、さらに二日経過した今日、俺と花守さんは何事もなかったかのように普通の日常を送っていた。
そして今日も同じく、花守さんと朝の登校をしていると花守さんから一つの誘いがあった。
「実は私の弟が突然動物園に行きたいと言い出しまして」
「花守さんって弟さんいたんだ」
「はい、今四歳の弟が」
あー、四歳か。
確かにその年頃の子だと動物園とか突然興味持ち始めるな。
しかし、そうなると俺の中に疑問が残る。
「でも、どうして俺を?」
「その、私の両親はどっちも仕事の都合で…」
「あー、それで俺を誘ったと」
「はい…すみません…」
「ううん、俺でいいなら行こうか」
俺は別に断る理由などはないので動物園への誘いを受けた。
「はい!江崎さんありがとうございます!」
意外にとても喜ばしい返答に不思議になつたものの喜んでくれているのなら良かった。
…動物園かぁ最後に行ったのはいつだろうか。
俺が小学生になった時とかだからざっと十年ほど前か?
「日程は今週の土曜日なのですが、大丈夫でしょうか?」
「土曜ね……うん、何も用事はないから大丈夫」
「それでは他の詳細は追って連絡します」
「分かった」
動物園についての話に一区切りつけるといつの間にか学校の近くまで来ていた。
しかし、そこでふと違和感を覚えた。
(花守さん弟さんと二人では嫌なのだろうか?)
動物園は二人だけでも全然入れるので誰かを誘わなくても良いのだが…。
まぁ、良いか。
俺は花守さんにも何か事情があるのだろうと思い、あえて口には出さず気にしないことにした。
―― ―― ――
土曜日。
現在俺は今回の目的地の動物園の前に一人で佇んでいた。
何故一人かと言うと、花守さんは弟さんを連れて来るのだが、動物園と実家がうちのマンションの近くの駅を挟んで正反対なのである。
そのため行く時は別々で目的地に集合、ということとなったのだ。
というか……先ほどから周りの人からのちょっとした視線がすごい気になる…。
まぁこんな男が一人動物園の前にいるのも変な話であるのだが……気まずい!!
「江崎さん」
俺があまりの気まずさに徐々にやられていく時、前方から俺の名前を呼ぶ花守さんの姿とその花守さんの手を握る小さな男の子が見えた。
「すみません遅れました」
「全然大丈夫だよ」
「あ、
花守さんが隣を向いて弟さんであろう子にそう言った。
しかし、その子は何もしないまま立ち尽くし、俺が見ているのに気づくと花守さんの後ろに隠れ怪訝そうな顔で俺を見つめるだけであった。
「もう信弥ちゃんと挨拶して」
「花守さん大丈夫だよ無理に言わせなくても。…何となく分かってたし」
「本当にすみません…」
ただでさえ高校であんな顔されてるんだからこんな小さい子が怖がらないはずがない。
俺はとりあえず腰を下ろして信弥くん?の目線に合わせる。
「こんにちは、信弥くん。俺は江崎智って言います、今日はよろしくね」
「…………うん」
俺がそう言うと少し間はあったもののちゃんと返事をしてくれた。
多分相手が俺なだけであって根はとてもいい子なのであろう。
「それじゃ、そろそろ中に入ろうか」
「そうしましょうか」
―― ―― ――
今回来た動物園は少し遠くにあるもののよくテレビで取材されるほど人気の場所であった。
そのため中は多くの人で賑わっていた。
「さて、信弥くん何から見に行きたい?」
「……………」
俺が信弥くんにそう聞いてみるも花守さんの後ろで無言のまま終わってしまった。
「信弥ー…」
「はは……信弥くんは家で何が見たいとか言ってた?」
「いえ、それが『象さん見たい』『キリンさん見る』と動物園にいそうな動物をほとんど見たいと言ってたので…」
「そっか」
別に一番に最初に観に行きたいものはないみたいなのでとりあえず流れて歩くか。
ここの動物園は草食動物、肉食動物、そして小動物が触れるふれあいコーナーに大まかに分かれている。
そして、入場と同時にもらえるマップには先ほどの流れで全体を見られる道のりみたなものが記入されている。
俺はマップを花守さんに見せながら言う。
「それじゃあこれの流れで行ってみる?これだったら大体の動物が見られるし」
「へー、こんなものがあるんですね。そうですねこれだったら丁度いいですね」
「じゃ行こっか信弥くん」
もう一度信弥くんに向かって言ってみると返事まではいかなかったが頷きはしてくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます