第28話 恒例行事

 ピーンポーン


 祭りから帰った俺は疲れていたのかその後一瞬で寝ることができ、今日の朝スッキリと起きることができた。

 現在、両親はスーパーへ買い物に俺と霧香はソファに並んで座りながら動物の特集番組を見ていた。


 そんな今日も平穏な時間を過ごしていた中突然インターホンが鳴った。


「誰だろう。お母さんなんか言ってたっけ?」

「いいや、何も来るとは聞いてはないが…とりあえず出てみるよ」


 今日親戚や配達物が来るとかなど母さんからは聞いてはいない。

 母さんはそういったことは必ず俺らに手紙やら口頭やらで伝えるのでそういう線の可能性は薄い。

 しかし、このまま考えていても相手を待たせてしまうのでとりあえずモニターで確認してみる。


「あれ?修哉だ」


 モニターに映っていたのは二、三週間ぶりに目にする修哉だった。

 修哉は近所とまではいかないが俺の家からすぐ近くにある。

 何のようなのか気になりながらもも通話ボタンを指で押す……直前で指を止めた。


 押す瞬間に俺は修哉の地味に後ろに隠れていたバックが目に入ったのとこの光景に見覚えがあるからだ。

 俺の脳にこの二つの記憶がしっかりと残っているのを思い出す。もちろん悪い意味で。

 

「…霧香今日何日だ?」


 俺はソファに座っている霧香にそう尋ねる。


「今日?二十七だけど。誰だったの?」


 日時的には毎年より二日ほど早いがここまで一緒なら確実だろう。


「…修哉だ」

「修哉くん?なら出れば……あー宿題か…」


 そうどうせ今回用件は俺に宿題を手伝ってもらうことだろう。

 毎年この時期必ず俺のもとにやってきてはそれをさせに来て俺の夏休みの最後を苦労でぶち壊す、そのため霧香もなんとなく察することができたのだろう。


 あいつ、夏休み前今年は大丈夫だって言ったよな…。

 俺は確かに夏休み前に修哉にその話題を振った。

 その時あいつは今年は大丈夫だと言っていたのをこの耳ではっきりと聞いたのだが、やはりこうなったとは…。


 しかし、今年の夏休みの最後は必ず平穏で終わらせると決めている。

 そうなればやることは一つ。

 このまま出ないでいよう。


 そうすればあいつは自然と諦めて帰ってくれるはずだ。

 俺はそうと決まれば再びソファに腰を下ろし、テレビを眺める。


 しかし、そんな願望は神には届くことはなかった。


 ガチャ……ガチャ

 

 しばらくすると玄関の方から鍵が開く音がした。


(嘘だろ?!)


 俺は慌ててソファから立つ。

 何故玄関から解錠された音が聞こえた。

 俺は修哉に合鍵など渡すわけがなく、多分家族もそんなことはしていない。

 

 俺はすぐ玄関を見に行く。

 そこには修哉……と母さんと父さんが立っていた。


「智、しゅうちゃん来てたよ。一緒にテスト勉強したいんだってさ、偉いわねぇー」

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