第27話 祭り③

「花守さんたち来てたんだ」

「はい、私は初めて来ましたがとても賑やかで楽しいです」


 そう言いながらこちらに近づいてくる花守さんたち。

 初めて来たということは花守さんの実家はここから遠いところなのだろうか。


「あ、あのそちらの子は…」

「ん?あぁこいつは…ってどうした霧香?」


 すると花守さんが視線は俺より下にして俺に対して困惑したようすで問いかける。

 俺も花守さんの視線を追うとそこには霧香がいた。

 確かに花守さんたちには俺に妹がいるとは話してはいなかったのでそうなるのも納得する。


 俺は霧香について話そうとしたのだが何故か霧香は俺の後ろに隠れていた。

 そして急に俺の腕を掴んできたかと思えば、

 

「か、彼女です!!」


 そう言った。

 あーそうだった、長いこと霧香と出掛けていないので忘れていた。


 霧香は兄の俺が見ても結構可愛くそれでいて明るい。

 しかしそれに反して人見知りが激しかったりもして、気を許した人しか仲良くしない。

 そんな可愛いと人見知りの相性は最悪らしく、結構ナンパにかけられることがあるのだがその度に何も出来なくなって固まってしまう。


 そこで役立つのが俺だ。

 霧香は買い物に行く時大抵俺と一緒に行く。

 そしてナンパに絡まれるとすぐに俺の彼女だと今のように言う。

 そんなことが何回か続き、結果ナンパの時だけでなく現在の花守さんのような人にも言うようになってしまった。


 今回の相手は花守さんで俺の友達だ。

 ナンパをする人とは違い彼女らはとても良い人なので怖がる必要はない。

 とりあえず俺はそこら辺の事情も兼ねて花守さんたちに話してみる。


「花守さん…ってどうしたの?」

「あ、え、その、え…」

「ありゃ、パニックになっちゃった」


 俺が話そうと花守さんたちの方を向くと、何故か花守さんが驚いたようなこの世の終わりみたいな顔をしてパニックになっていた。

 そんなに驚きだったのだろうか?


 俺たちはその場で立ち尽くしてしまう。

 でもここで立ち止まっていると周りに迷惑がかかってしまうのでとりあえずこの場から離れることを提案してみる。


「あの、ここだとあれだから広いところに行こうか」

「そうしよっか」


 そう言ってきたのは水瀬さんの声だった。


―― ―― ――


 とりあえずその場から離れた俺らは少し先にある広場のベンチで腰を下ろす。

 その間霧香はずっと俺の後ろにおり、花守さんは未だにパニックになっていた。


「はい、それじゃあ江崎くん分かりやすい説明を」


 そう言って話を広げたのはまたまた水瀬さんだった。

 水瀬さんってこう見るとみんなのお姉さんって感じがするな…。


「まぁとりあえず俺と霧香は……」


 俺はとりあえず何故かパニックになってしまっている花守さんのために霧香についてとなぜあんなことを言ったのかの説明を、それから未だに人見知りをしている霧香に花森さんたちについての話をした。



「そ、そうだったんですね」


 ひと通り話を終えると花守さんはなんとかいつも通りになっていった。


「あ、霧香ちゃん、私変に驚いてごめんね」

「あ、いえ、こちらこそ混乱すること言ってすみませんでした」


 花守さんと霧香はお互いに謝ったのだが、俺からしたら謝るようなことだったのかと不思議になる。

 でも良い方向に落ち着いたのには変わらないので良かった。


「ち、ちなみに江崎さん、その…今彼女がいたりしますか?……」

「へ?」


 すると花守さんがまた不安げにそんなことを俺に聞いてきた。

 何故今そんなことを聞くのかよく分からなかったがとりあえず本当のことを言っておく。


「いないけど…」

「そ、そうでしたか。すみません変なこと聞いて…」

「あ、いえ」


 そう聞いた花守さんはどこかホッとした顔をして『…そっか…良かった……』とか聞き取りにくい声で独り言を言っていた。


 それから俺と花守さんたちは少し話してからまた同じグループで祭りに戻っていった。

 しかし、霧香が行くよりもニコニコしていたように見えたのだが良いことがあったのだろうか?

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