第26話 祭り②

「お兄ちゃん、久しぶりに射的やってよ」


 わたあめ、たこ焼き、焼きそば、チョコバナナ、りんご飴、わたあめ。

 今言ったのはすべてここにきて約一時間で胃の中に入れたものだ。

 俺はもうこれ以上食べたら嫌な予感してならないのに対して霧香はまだまだいけそうな顔をしている。

 俺の妹すごいな…。


 そんな俺に霧香が突然指をさしてそんなことを言ってきた。

 その先を見ればここまででもう六件ほど見てきた射的をしている屋台があった。

 正直今の俺にはきつい気がするのだがこの後まだ食べるのならば断然こっちの方が良い。


「おじさん一回お願い」

「はいよ…ってさとちゃんじゃねぇか!?」

「あれ、山本のおじさんだ」


 射的の屋台に近づいて屋台の中にいるおじさんにお金を渡す。

 すると、何故かそのおじさんは俺をさとちゃんと呼ぶやめっちゃ驚かれた。

 そのおじさんに驚いて俺もおじさんをよく見れば毎年この祭りの射的でお世話になっている山本のおじさんであった。


「まさかさとちゃん、また俺の店荒らす気かい?」

「あ、あはは…」


 そんなたいそうなことはしてないのだがそう言われても仕方ないのだろう。

 何故なら俺は先ほども言った通り毎年のようにこの射的をしている。

 そのおかげで射的の腕は上がり、去年この山本のおじさんのとこでやったのだが屋台のほとんどのものを取っていってしまったのだ。


「だ、大丈夫ですよ」

「そうかい?まぁ楽しんでいきなよ」


 少し俺を怪しみながらも銃とコルク玉を俺に渡す。

 本当は大丈夫か分からないんだけどね…。


「んー、霧香何が良いと思う?」


 銃にコルク玉を入れて準備を完了させるのだがものが豊富なおかげでどれが良いか悩む。

 そのため霧香に欲しいものを聞いてみる。


「良いの?」

「あぁ、どれでもいいからな」

「それじゃあ…あの花のヘアピンでも良い?」

「あれな、分かった」


 霧香が選んだのは桜の花びらがあるヘアピンだった。


 目標を確認した俺は銃口をヘアピンに合わせ、このぐらいだと感じたところで引き金を引く。

 最初の一発目、コルク玉はヘアピンの少し上を通過していった。


「惜しい…」

「まぁだいたい分かったよ」


 ヘアピンに当てることは出来なかったが最初の一発目は距離感や向きを確かめるものだったので別に当たらなくても良かった。

 俺はもう一度さっきと同じ位置に銃を持ってき、さっきよりも銃口の向きをほんの少し下げると再び引き金を引いた。


 二発目は……ヘアピンに当たり見事命中。

 ヘアピンはそのまま後ろの方に倒れていった。

 目標のものは獲ったので残り五発適当にお菓子に撃ってみる。

 結果、コルク玉七発に対してヘアピンとその他お菓子三つを落とし合計四つのものを落とすことに成功。


「ほい、霧香」

「ありがとうお兄ちゃん!」


 山本のおじさんから落としたものを受け取り、ヘアピンを霧香に渡すと嬉しそうに顔を笑顔にしてくれた。

 その顔を見ると自然と俺も笑顔になる。


「あれ?智さん?」


 すると突然俺の名前を最近聞き慣れた声で呼ばれた。

 霧香に向けていた視線を上にするとその先には浴衣姿の花守さんと水瀬さん、玉井さんが立っていた。

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