第25話 祭り

「あ、智今日の祭り行くのか?」


 俺が実家に来てから今日で二日。

 現在やることが大体終わっている俺と霧香は久しぶりにテレビゲームをしていた。

 すると、キッチンで昼食の準備をしてくれていた父さんがそんなことを言ってきた。


「あれ、今日だっけ?」

「お前毎年行ってたろうが…」


 この近くでは毎年この時期に大きめの祭りが開催されており、ちゃんと花火も打ち上げられている。

 俺は毎年修哉か霧香と行ってはいるがその日がまさか今日だったとは。


「お兄ちゃん行こ行こ!」


 それを同じく聞いていた霧香がやけにハイテンションになって俺を誘ってきた。

 急に知ったことではあったがもともと行く予定だったので逆にありがたかった。


「あぁ、行くか」

「やった!」

「そうか。なら浴衣は智の部屋にあると思うぞ」

「おっけ分かった」


 そう言って昼食が出来るまで再び霧香とゲームで遊んでいた。


―― ―― ――


「……こんなんか」


 一年ぶりに浴衣を着るもののこの作業もすでに十年ほどはやってきてはいるので、案外すんなりと着られることが出来た。


 自分の部屋から出てリビングに戻るがまだ霧香の姿はなかった。

 女性は浴衣だけではなく髪とか化粧とか男性よりもすることが多いことは知っているがやはり大変なのだろうか。


 着物にしわが出来るのは何となく嫌なので立って待つことにする。


「お兄ちゃんお待たせ」


 数分後、階段から降りてくる音がしてリビングのドアが開けられた。

 開けられたドアにいたのはいる一段と可愛くなった霧香がいた。

 紺色の生地に花火の模様がついている浴衣、ほんのり化粧をしているようだった。


「お兄ちゃん、どうどう?」

「あぁ、可愛いよ」

「やった!お母さん可愛いって!」

「フフッ、良かったわね霧香」


 霧香の後ろには母さんの姿があり、母さんも手伝ってあげたのだろう。


「それじゃそろそろ行くか?」

「うん!」


 時刻は十七時ごろ、今から行っても十分楽しめるだろう。

 俺はその場から離れ、霧香を連れて玄関に向かう。

 

「行ってらっしゃい二人とも」

「「行ってきます」」



 家を出てから数分周りには浴衣姿や私服姿の人が多くなり、途中から暗かった道が明るくなってきた。


「相変わらず賑わってるな…」


 焼きそばやチョコバナナ、わたあめなどの飲食系や射的や輪投げ、くじ引きなどの娯楽系など周りを見るだけですでにたくさんの種類の屋台があるのに前を向くとまだまだ屋台が並び続けていた。


「はい、お兄ちゃん一緒に食べよ」


 すると霧香が呼んだので声がした方を向くといつの間に買ったのか右手にはすでわたあめが握られていた。


「俺が食ったらその分減るぞ?」

「一緒に食べるために買ったからいいの」


 やっぱ霧香は優しいな。

 もう霧香は中学二年なので、反抗期とかもなる年頃でもあるのに今でもなお俺のことを嫌うどころかお兄ちゃんとまだ呼んでくれる。


「そうか…。なら俺もお返ししないとな」

「ん-、ならたこ焼き!」

「はいよ」


 そうしてしばらく俺と霧香はお互い何か買っては一緒に食べて祭りを楽しんだ。

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