第14話 雷雨②
「と、とりあえず中入る?」
ドアを開けた先にいた花守さんはこちらを涙目の状態で見ていた。
思わず俺も戸惑って立ち尽くしたまま見つめてしまったが今いるのは部屋の外なので雨が身体に直撃する。
風邪をひいてしまう可能性もあるのでとりあえず花守さんを俺の部屋に入るように促した。
そういうと花守さんは小さくコクコクと頭を縦に振っている。
花守さんをリビングにあるソファまで案内すると俺はタオルと飲み物を持ってくるためにその場を離れる。
しかし花守さんは俺が離れようとすると自分も席を立ち俺の後ろをちょこちょことついて来る。
正直なところひよこみたいでめっちゃ可愛かった。
「あ、ココアでよかった?」
「は、はい。ありがとうございます」
「それで一体どうしたの?」
入れたココアを花守さんに渡してからこうなった理由を聞く。
でもここまできたらなんとなく理由は察してはいた。
「えっとですね……か、雷が怖くて…」
俺の予想は見事に的中した。
「えっと今までは大丈夫だったの?」
「はい、去年までは家族と暮らしていたのですけど…今年からは一人なので」
「あぁそうゆうことか」
確かに今までこういうことになったら近くに家族がいるので安心させてくれるが一人暮らしになったらそうもいかない。
再び花守さんに目をやるとクマのぬいぐるみを抱きしめながら少し震えている。
とりあえず花守さんを落ち着かせたいがどうすればいいかわからない。
すると何故か俺は今の花守さんの姿にどこか既視感を感じた。
なんでそう感じたのかわからないのでちょっと記憶を思い返してみる。
(どこで見たんだっけ……………あ)
そうだ思い出した。霧香だ。
霧香とは俺の二つ下の妹だ。
確か霧香も花守さんと同じように雷が苦手で雷が鳴る日は毎回俺のところにやって来ては身体を震わせていた。
(で、確かこうすると落ち着くとか…)
そして毎度のように霧香は俺に自分の頭を撫でさせてくる。
そうすると落ち着くんだとか。
なので花守さんにも同じようにやったら落ち着くのではないのかと思い花守さんの頭に手を伸ばし、撫でた。
すると花守さんは目を丸くしてこちらを見つめてきた。
ちょっとして俺は今自分のしているやばさにやっと気づいた。
「す、すみません!」
「あっ……」
俺は謝ると同時に手を引っ込める。
しかし花守さんは物足りなそうな目で見ていた。
「あ、あの、その…今のもう少しお願いできますか…?」
「え、いや、その…」
「えっと、撫でてもらった時、ものすごく心が落ち着くと言いますか…」
花守さんは嫌がるどころかなんということかアンコールをしてきた。
俺の心が持たないのでやめさせてもらおうかと思ったが花守さんが無意識の上目遣いで頼んでくるせいで断ることなど無理だと感じた。
(あぁもうやるしかねぇ!)
俺はもう一度花守さんの頭に手を伸ばす。
さっきはほぼ無意識でやっていたが今度は意識してやる。
そのため現在俺の心臓は今までにないぐらいバクバクしてる。
花守さんの頭に手をのせると髪が乱れないように丁寧に撫でる。
視線を花守さんの顔に移すとその顔は気持ちよさそうに目をつむっており、そして身体の震えはほぼ見えなくなっていた。
花守さんの髪はサラサラで触り心地が良く気付けばしばらくの間頭を撫で続けていた。
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