第6話 スイーツ①
土曜日。
結局昨日はあの後は風邪で来れなかったので色々聞けずじまいになってしまった。
まぁ聞けても聞けなくてもこの休日が暇なことには変わりがない。
寝転がっていたソファから上半身をあげ、テレビ上にある時計を見る。
時刻は十二時前、そろそろ飯を作ることにする。
腰をあげ、冷蔵庫を開けるが俺はあることに気づく。
(食材があんまりないな…)
基本俺は三日、四日に一回ほど、スーパーに行き食材を調達する。
それを買いに行くのが昨日だったみたいだが、昨日はやはり人付き合いについて考えていたのですっぽり記憶から抜け落ちていたみたいだ。
幸い、昼飯を作る分はある。
(仕方ない、買いに行くか)
俺はこの後の予定を決めたところで昼飯の準備に取り掛かった。
ちなみに昼はサラダうどんにした。
―― ―― ――
夕方のスーパーは何かと賑やかであった。
とりあえず俺は今日を含め、四日分の食材を買うことにする。
さて、まずは野菜コーナーから見ていこうかな。
「あれ?江崎さんじゃないですか」
カートを押し、野菜コーナーから見ていこうとすると、最近から聞き覚えのある声がした。
横を見ると、袋を抱えて歩く花守さんがいた。
「あれ、花守さん。こんばんは」
「はい、こんばんは。江崎さんもお買い物ですか?」
「うん、ちょっと食材が切れてね…。花守さんも食事の調達とか?」
「んー、それもそうですがどちらかと言うとスイーツを買いましたね」
「スイーツか、美味しいよね…」
スイーツ…というよりも甘いもの全般は昔からすごく好きだ。
まだ、一人暮らしをする前は近くにあったケーキ屋に流石に一人では行けないので母親同伴で週一で行っていたほどだ。
特に最近はバイトをしている喫茶店で作っているショートケーキは俺の中でお気に入りである。
「江崎さんってスイーツ好きなのですか?」
「ん?まぁスイーツとか甘いものは好きだね」
すると花守さんはなぜか俺が甘いもの好きだと分かると何かを考え始めた。
ちょっとして花守さんは口を開いた。
「…江崎さん明日何かご予定は?」
「明日はない。ていうか基本休日は暇」
「そうですか…、あの、江崎さんがよろしければなんですが」
「?なに?」
「明日スイーツ店に行きませんか?」
「へ?」
ス、スイーツ店?
誰と?
「別に無理してとは言いませんが」
「え、いや違くて。…俺と?」
「はい、江崎さんとです」
「えっと、いつもいる女の子たちとは行かないの?」
「彼女たちはそれぞれ部活だったりで忙しいみたいで。…一人で行くのは流石に気が引けてしまって」
分かる。何故かスイーツとかそういう店って一人じゃ行きづらいからな…。
「それで、どうでしょうか?」
どうしたものか。
多分行ったら行ったで緊張してしまい、気まずい空気が流れてしまう可能性がある。
しかし、逆を言えばこれをきっかけに友達としての仲が深まるかもしれない、それを考えると別に迷うこともなかった。
「…うん。俺で良かったら一緒に行こうか」
そういうと、花守さんの顔は見る見るうちに嬉しいと言わんばかりの顔になっていった。
「はい、ありがとうございます!あ、それでは連絡先交換しましょうか」
れ、連絡先を交換だと…。
スマホに入っている連絡先が片手の指で数えるほどしかなお俺にとっては感動の言葉だった。
俺はそういう操作が分からないので『お願いします』とだけ言ってスマホを花守さんに渡した。
花守さんは慣れた手つきで指を動かしやがて俺のスマホから通知オンが流れた。
返してもらったスマホを見ると可愛らしい猫のよろしくスタンプが届いていた。
俺も持っている犬スタンプを送り返す。
俺もう嬉し泣きしちゃうよ…。
それから俺たちは時間と場所だけを決めて、後は連絡ですることになり、花守さんは帰り、俺は買い物を続けた。
(明日楽しみだな…)
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