第5話 挨拶
昨日俺は花守さんと友達になった。
なったのだが…女の子の友達ってどうやって接すれば良いんだ?
俺はその問題を昨日の夜から考えていた。
実際俺にいる友達は修哉だけであり、女の子の友達などいるわけもない。
そんな俺が挙動不審な状態で彼女に接してみろ。せっかくできた友達が秒で失ってしまう。
さて、ではどうしたら良いか。
答えは一つ、修哉に聞こう。
あいつは俺とは違いたくさんの友達がいて、人付き合いをとても良い。
そんな修哉に聞いてみれば多少、いや結構なコツやらなんやらが聞けると思う。
そうゆうことなので今日の俺はいつもより早めの視線を感じながら学校に向かうのであった。
―― ―― ――
俺は教室に入り、修哉がいるか確認をする。
修哉は…まだ来てはいないみたいだ。
修哉が来るまで暇なのでとりあえず持ってきていた本で読書でもするか。
俺はカバンから本を取り出し読み始める。
「おはようございます」
すると、後ろから挨拶をする声が聞こえてきた。
まぁ学校で俺に挨拶する人など修哉を除いてみたことがないので俺に向かってのではないことは振り返らずともわかることなので、俺は気にせず本を読み続ける。
「…江崎さん」
すると、今度は何故か俺の名前が呼ばれる。
誰?という疑問が浮かびながらも顔を後ろに向き直し、相手を確認する。
目の前には、花守さんが立っていた。
しかもなぜかむすっとした顔を浮かべていた。
「あれ?花守さんどうしたの?」
「江崎さん、なんで挨拶返してくれないんですか」
「え?挨拶?」
「はい。私今しましたでしょ」
もしかしてさっきのやつか?
どうやらあれは俺に向けられたもののようで、花守さんはそれを返してくれなかった俺にちょっと不機嫌になっていたらしい。
「ごめん。俺に向けられたものだって思わなくて」
「江崎さんの周りにはほとんど人がいないと思うんですが?」
そう言われるので一度周辺を見てみる。
本当だ…。登校したのが早かったせいかそもそも教室にはほとんどの人がいなかった。
「はぁ…、江崎さん」
「は、はい」
「これからはちゃんと挨拶をされたら返してくだい。良いですね?」
「はい」
「それではもう一回やるので返してくださいね。…おはようございます」
「お、おはよう」
花守さんはもう一度俺に挨拶をしてきた。
それを返すように俺も返した。
それが満足いったのか花守さんはむすっとした顔から笑顔になっていった。
「はい、よく出来ました。それでは私は自分の席に戻るのでこれで」
「あ、うん…」
それだけ言って花守さんは自分の席に向かって近くにいた友達と談笑をしていた。
俺、挨拶されたのか。しかも友達に。
今まである特定の人としか挨拶を交わさなかったので忘れていたが。
友達に挨拶されることが俺にとってはここまで嬉しいものだったとは…。
しかしそれと同時に気づいたことがある。
俺、女の子の友達よりも人との接し方について学ばなきゃダメなんじゃね?と。
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