第3話 美少女と翌日

 遠くからでも分かる艶のあるロングの茶色の髪に、クリッとした大きな目、日焼けのしていない綺麗な白い肌。

 それが花守楓の容姿。

 さらにそれだけではなく、勉学は必ず一位を取るほど優秀であり、運動もほぼ全般人並み以上出来るといった、神様が全体的に良い方にしかやらなかったような人が彼女だ。


 一応俺も彼女と同じクラスではあるのだが遠くからしか見たり、男たちが何やら騒いでいるのを聞き耳を立てたりするくらいの感じだ。

 なのでこんなに近くで見るのは初めてで……やっぱ、美人だな…。


「えっと、江崎さん…ですよね?」


 突然の美少女の登場に頭がパニックして意識が飛んでいたが、花守さんの声で元に戻される。


「あの、た、助けていただきありがとうございました」

「いえ、助かって何よりです。それより花守さん、怪我とか大丈夫でしたか?」

「はい。おかげで怪我はありませんでした」


 とりあえず、怪我をしたかを聞いたが、良かった怪我がなくて。

 もし彼女になにかあったら学校の男どもが黙ってはいないだろう。もしかしたらその次の日にはさっきの男たちが学校で吊るされているかもだし…。


 俺が安堵をしていると、花守さんは何故か俺を見てキョトンしたようすで俺を見ていた。


「あ、あのどうしましたか?」

「あ、いえ!…それよりも、先ほどのお礼をしたいのですが…」

「お礼ですか?別にそんなことしなくても…」


 花守さんにさっきのお礼をさせて欲しいと言われたのだが、突然俺の右ポケットから着信音が鳴り出した。

 誰からだ?

 とりあえず花守さんに『すみません』とだけ言ってスマホを取り出す。


 スマホの表示画面には《店長》と表示されていた。


 あれ?そういえば俺バイトに行く途中だったような…。

 慌てて時刻を確認する。

 現在、十七時十七分。ちなみにバイトが始まるのは十七時だ。うん、遅刻だ。


「やばい!ごめん俺今日バイトだったんだ。急がないといけないから、俺はこれで!あ、帰り道に気をつけて!」

「え、あ、ちょっ!」


 先ほどナンパにあった人をそのまま返すのも癪だが、今回ばかりは許してくれ。

 後ろの方から呼び止められたような気がしたが俺は気にせず、一直線にバイトへと向かうのであった。


―― ―― ――


 翌日。

 あのナンパの後、特に大変なことはなかった。

 バイトに遅れて怒られるよりかは、いつもバイトが始まる十分前には来ている俺が珍しく遅刻だったので心配してしただけだった。


 俺はあそこに置いて行ってしまった花守さんが心配だったのだが、花守さんは今日も朝元気に登校してきたようなので、あの後は何事もなく変えることができたのだと見られた。

 ただ時折、こちらをチラチラ見てくるのは気のせいなのだろうか?


―― ―― ――


 授業も問題なく進み現在、昼休みとなった。

「飯、一緒に食おうぜー」

 用意した弁当を自分の机に広げていると、目の前から修哉が弁当片手に俺に歩み寄ってきて、俺の前の席に座る。

「お、今日もうまそうだな」

「やらないぞ」

「別に良いよ。それにしてもこれお前が作ってるんだろ。相変わらずすげぇな」

「そうか?一人暮らししてるならコレぐらいはすると思うが」


 今、俺は親元を離れ、親の許可のもとマンションで一人暮らしをしている。

 そのためある程度しっかりとした生活をするために家事全般は出来るようにしていた。

 ちなみに今日はサラダうどんにした。


「一人暮らししてても出来るひとはそういないんだよ」

「よくわからんな」

「まぁそれは置いといて。昨日のテレビなんだ…」


 修哉が昨日のテレビについて話し始めようとすると何故か固まった。

 それどころか教室もザワザワしている。

 どうしたんだ?


「あの、江崎さん」


 しかしその疑問はすぐに解決される。

 後ろから聞き覚えのある声がしたので振り返ると花守さんがいた。


「今少し時間よろしいでしょうか?」


 その言葉にさらに教室内はざわざわする。

 『なんで、江崎に…』とか『…怖くないの?』とか『なんかやられたのか?』などなどそう言った、今の状況が分からないでいるみたいような言葉が聞こえてくるが、実際話の中心である俺ですらもよく分かっていなかった。いや、多分昨日のことについてだとは思うが、その後の内容が全くもってわからない。


 とりあえずついて行ってみるだけ行くかと思い、修哉に一言声をかけて花守さんの後ろについて行った。

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