オラっ!封印!!

@rakugakieshi-uirou

むかしむかし

昔々、遥か大昔。

この地に始まりの神"スレウテス"がやってきたところから物語は始まります。始まりの神スレウテスは星の海を泳ぎやがて大きな陸地を見つけます。さっそくこの場所に様々なものを作り、治めようと考えたスレウテスでしたが、一柱ひとりでこの地を治めることは難しいと思い、光を司る女神"ラーフィルアトル"と闇を司る女神"マーレイタルフ"を生み出しました。彼女達は光と闇、熱と冷気、昼と夜を司り、その差異によって様々な草木や獣が生まれました。

そして、ラーフィルアトルとマーレイタルフはそれぞれ節制の力である光の魔法を扱う"魔族"と欲望の力である闇の魔法を扱う"人族"を創りました。

長い時間をかけて魔族と人族は共に世界を切り拓き、街を作り上げ発展していきました。

今では無二の友として互いが互いを必要とする仲であり、隣人との友情は長く、永く続きました。

それがこの世界、"アストレア"の歴史なのです。



そんなアストレアのあるところに一人の少年が産まれました。

その少年の名は"ダンタール"、無駄に整った顔と無駄に高いカリスマと果てしなく深い欲望を持つ少年でした。


少年であるダンタールが青年に成長した頃、彼は一つの強い欲望をその身に秘めていました。それは、『世界中の人々を幸せにしたい』という途方もないものでした。

周りの人達はそれとなくやんわり諦めるように言い続けたのですが当のダンタールは全く聞きませんでした。さてそんな彼の行動を闇の女神マーレイタルフも観ておりました。そして、『凄いじゃろ!?』『ヤバいじゃろ!?』『はちゃめちゃに愚かわいいじゃろ!?』と自分テメェの恋人でもねーのにさんざんっぱらラーフィルアトルにマウントのような自慢をし、ラーフィルアトルも『ソウデスネー、スゴイデスネー』と棒読みで共感しておりました。


そんなダンタールはある日突然『旅に出る』と言い放ちました。ろくに畑を耕さずかといって剣を振っているワケでもないお前がなんのために旅に出るのだと父親は真っ当な考えから彼を非難しましたが、ダンタールの決意は揺るがず彼の父親も諦める他ありませんでした。そして、ダンタールは本当に旅に出ました。村の人達は『どうせ飽きて3日で帰ってくるさ』『へとへとになって帰ってくるのが見える見える』と信じていない様子でしたが、そんな予想に反して彼はなんと10年も村に帰ってきませんでした。


彼が帰ってきたのはたまたま故郷の近くに採取して欲しいという依頼の花があったためでした。10年越し急に顔を見せたダンタールに村の人達は大層驚き、父親に至っては彼が死んだものと思っていたため嬉し泣きをするほどでした。

急に帰ってきたダンタールに対して村人達から『今まで何をしていたのか』と問われると、ダンタールは短く『人助けをしていた』と返しました。彼の話し曰く様々な街を巡り困っている人に声をかけて手伝っていたらいつの間にか【冒険者】ダンタールと呼ばれさらに様々な危機を退けたそう。村人達は信じられませんでしたが彼の50人の妻一人一人が証言をするので信じる他ありませんでした。


そう、彼は行く先々で美しい女性に声をかけて愛を育みました。誰よりも深い欲望を持つ彼は3大欲求も凄かったのです。流石に50人との結婚は無茶苦茶ではないかという声も今までに何度も上がりましたが『50人幸せにできねぇで世界中を幸せになんざ無理だろうが!!えぇ!?』という無駄に熱い心と無駄に高いカリスマのおかげで他人に『ア、アンタほどの人がそう言うなら……』となる雰囲気を押し付けて説得してきたのです。そうして歴史上初の1夫50妻という偉業バカを成し遂げたダンタールは依頼を終わらせるとまたすぐに出立してしまいました。それから更に5年ほどでしょうか、村には聖地巡礼だとかなんとか言って大勢の【冒険者】が訪れました。なんとダンタールの働きが各地に広まった結果【冒険者】は職業となったのです。


そんなダンタールですが彼もやはり定命の者。

長年の旅が祟ったのか、愛を多く紡ぎすぎたのか、彼は齢45にして天へと旅立ちました。50人の妻とその間に設けた子達を残して旅立ってしまったのです。



『……本当に、よいのか?』


『えぇ、愛するもの達に囲まれて、枕元に女神すら立って下さった。これ以上は流石に【欲深き】ダンタールでも望みすぎというものでしょう……』


『……そうか、あいわかった。ゆっくり、ゆっくり休むのじゃぞ……』




ダンタールが天へ旅立ってから100年が経った頃、突如"魔王"を名乗る何者かが現れました。これには女神ラーフィルアトルも『誰!?誰なんですかアレ!?』と困惑を隠せませんでした。何せ自らが生み出した魔族の王を名乗りながら生み出した覚えのない者だったからです。ラーフィルアトルとマーレイタルフの二柱ふたりがわたわたおろおろしていると聞いた事のない声が聞こえてきました。『フッフッフ……我は邪神、アーレアタルス!恐れ慄き平伏すが良い!!』と分かりやすい黒幕ムーブをしてきた邪神に対して取り敢えず殴っとけの精神で二柱ふたりはぽかすかとタコ殴りにして下界へ叩き落としてしまいました。


それと同じ時期、魔王の出現と同時に"聖刻"と呼ばれる痣が体に浮かんだ者達、【勇者】達が魔王を討ち滅ぼさんと魔王城に集いました。【勇者】という称号はかのダンタールの呼び名の中でも最もマシな敬称であり、誉ある呼び名でした。さすがに300人の勇者達の猛攻には耐えられなかったのか魔王もその配下(なぜか女性ばかり、なんでだろうなぁ?)もあっという間に追い詰められました。

追い詰められた魔王があまりカミングアウトしたくなかったことを言っちゃおうかな〜となった時でした。

空から邪神アーレアタルスが降ってきたのです。

これ幸いと魔王はアーレアタルスと合体し"魔邪王神"となり……3秒でボロ雑巾にされました。


そしてマジで追い詰められた魔王は、なんと自分こそかの【欲深き】ダンタールであり、勇者達は自分の子孫だと衝撃のカミングアウトをしました。そんな『I'm…your…ancestor……!』をされた勇者達は『Noooooooo!?』と叫びながら今度こそ魔王をたたっ斬りました。


これにて一件落着かと思いましたがまだ邪神アーレアタルスが残っており、勇者達はなんかやるせなくなった体に鞭打ち激闘に身を投じるのでした。

邪神アーレアタルスはとてつもなく強大な相手であり、その闘いはなんと7日7晩続きました。そして、勇者達は太刀打ちできぬならばとアーレアタルスを封印しました。のちの世代に必ず邪神を討ち倒す本物の【勇者】が現れることを願って。



時は流れ遥か1000年の時が経ち、封印から嬉々として飛び出た邪神アーレアタルスが最初に聞いた言葉は……

















「オラっ!封印!!」









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