第41話【病院へ①(to the hospital)】
合同捜査本部の発表では、先日起きたジョンFケネディー空港の事件で犯人グループは乗員乗客全員にシートベルトを締めさせてから爆弾を仕掛けたそうだ。
シートベルトが外されると、ランプが点灯する仕組みを利用した仕掛け爆弾。
当然、シートベルトを外せない乗員乗客に掛かるプレッシャーは大きい。
シーナが一刻を争うように急いだ判断は正しかった。
もし誰かがプレッシャーに耐えかねて、シートベルトを外してしまおう事なら400人の命だけでなく47,890ガロン (181,280リットル)の航空燃料の爆発により空港ターミナルは全壊し、ターミナル内はもちろんのこと周辺にいる人たちにも多大な犠牲者を出したことだろう。
ここまでは分かった。
しかし犯人たちが、何者の指示を受け、誰と交渉していたのかは未だ分かっていない。
身体を違法サイボーグ化した3人にも何の接点もなく、彼等が誰の、何の目的で利用されたのかは不明のまま。
警察はサイボーグ犯罪に対応できるような強力な武器を携帯していないので、あとの捜査はいつも通り我々CCS(サイボーグ犯罪対応班)に“丸投げ”と言う事で会議は終了した。
「毎度、お気楽な物ね。サイボーグ犯罪が発生すると直ぐにCCSに応援を要請して、無事解決すれば警察の手柄。面倒な捜査が残るとまたCCSに丸投げなんて」
「そうね」
エレンが文句を言った。
確かに、いつもそうだけど、これは仕方がないこと。
拳銃と警棒だけではサイボーグ化した犯人には対抗できない。
軍用の対物狙撃銃M84A10スーパーバレットや、小型ロケットランチャーMG32改ファゴット、それにグラビティ弾などの強力かつ特殊な武器に加えて各種の格闘術を身に着けた軍人だからこそ対抗できている。
しかし科学の進歩は我々の想像を遥かに超えている。
それが、あの事件でハッキリと分かった。
あとどのくらい生きられたかは分からないが、ついに両手両足を根元から切断してサイボーグ化した犯人が現れた。
もちろん医学的には可能なこととされているが、人体そのものの。 特に患者の脳や神経が複雑な信号変換のストレスに耐えられない。
現在の医学&科学では、腕なら利き腕だけ、足なら太ももから下の部分だけと言うのが常識だった。
なのに、アイツときたら両手両足を根元から……。
もともと2mを越える巨漢を支える強靭な体力の持ち主だったのだろうとは思うが、それにプラスして強力な覚せい剤を使用していたから出来た事ではあるが、それにしても凄すぎる。
今後もし、アイツのようなヤツが複数人同時に現れたとしたら、私のやり方では通用しない。
おそらくサンダース軍曹も、それを危惧して私に厳しく当たっているのだろう。
……でも、私はやらなければならない。
両親が発明して世に出してしまったサイボーグシステムと言う技術を犯罪に利用する者たちを許すわけにはいかないのだ。
「シーナ、行くぞ!」
会議が終わってリリアン……いや、ビアンキ中佐が私の所に来て言った。
「ハイ」
フェルメールブルーのNISSAN GT-R改に乗り病院に向かう。
行先はJFK空港事件の犯人が入院している病院。
目的は犯人への尋問。
夕方前の273号線。
右側の明かりはヤンキーススタジアムの照明だろうか、ビルが多すぎてあんなに大きなスタジアムさえも姿を隠している。
「到着まで、書類に目を通しておきなさい」
「ハイ」
景色に気を取られて、渡された書類の束を見て慌てる。
ブロードウェイにある病院に到着するまでに、この資料を読み終わらないといけないのだ。
私が倒した3名は共に前科持ちの札付きの悪党で、シャバ暮らしよりも刑務所暮らしの方が長いような奴等。
共に“闇サイト”と呼ばれる犯罪者専用サイトに登録していた。
当然犯行を依頼した組織などは自らが表に出ないように巧妙に正体を隠しているが、問題は彼らに誰が手術を施したかだ?
通常は手足を切断した後に、事件とは関係のない医師に一旦医療認定を受けたサイボーグパーツを装着してもらって、そこから違法改造業者がパワーアップに取り掛かるのでナカナカどこの誰が違法改造に関与したのかが分かりにくい。
だが今回は違う。
両手両足を根元から切断されて生き残る事のできる人間は先ず居ない。
だからコイツだけは、直接切断手術と違法パーツの取り付けが行われた可能性が高い。
そして足を改造したヤツと死んだヤツは、刑務所に同時期に居た期間がある。
つまり旨い話を聞きつけたどちらかが相手を誘った可能性も考えられると言う事。
もしそうなら、手術も同時期に行なった可能性も充分考えられる。
実際に警察の資料を見ると、この2人共ほぼ同時期に手術を行っている可能性が高いと言う事になっている。
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