第11話【夜の捜査線⑤(Search line at night)】
「行くぞ!」
「OK!」
ドアの前に立ち、コーエンとルー、それにミッシェルに合図をおくりインターフォンを押す。
しばらく待つと不機嫌そうな声で「誰だ」と応答がある。
「大変お待たせしました。M&Sレストランの宅配ですが、ご注文いただいたお料理をお持ちいたしました」
「……」
しばらくするとドアが開いた。
犯行現場に居た2人とは違う感じの、スーツを着たパンチパーマのメガネの男。
身長は私と同じくらいで、痩せ型の東洋人。
男と表現するより、オッサンの方が似合う。
インターフォンを押してからドアが開くまで少し時間が経ったのは、誰が注文したのか聞いていたのだろう。
当然誰も注文なんてしていない。
なのにドアを開けたのは、私が女だから?
「誰も注文してねえぞ」
「おかしいですねぇ。たしかに番地はここになっているのですが……」
「うるせー! 間違いだって言ってんだろうが、チョッと来い!」
男が急に私の手を引っ張り、奥に連れ込む。
「キャーッ! なにするんです!?」
私は手に持っていた箱を床に落としてしまい、部屋の奥に連れ込まれた。
「キャーッ!」
ドスン!
シーナの悲鳴に続いて、箱が落ちる音。
そして、その箱が邪魔をして、ドアが開けっ放しになる。
「おいっビヨン、ドアを閉めてこい‼」
「へえ!」
ビヨンと呼ばれた男が段ボール箱を拾い上げて、ドアを閉めようとしたところで、そいつの手を引っ張り廊下に連れ出しルーと2人でボコボコにした。
あとは、ルーが持っていた音量増幅器を使って、中の様子を窺うだけ。
シーナの読み通りなら、あと2人は廊下に出てくるはずで、そいつらを片付けてから俺たちも中に突入するのがシーナの立てた作戦だ。
部屋の中は、倒産か夜逃げした会社のものらしく、コイツ等には似合わない真っ当なオフィス。
受付のカウンターがあり、その奥には十数台の机が並び、私はカウンターの奥にある応接セットのソファーに座らされた。
部屋にはもう4つ、別の部屋があるらしく、4つのドアが見える。
2つはおそらく従業員用のロッカールームで、1つは給湯室、そしてもう一つは役員室に違いない。
見える範囲で確認できる敵は全部で5人。
そのうち1人は、宝石店を襲った2人の内の片足に違法サイボーグパーツを装着した男。
巨漢の男の方は見えない。
パンチパーマのオッサンは私がレストランのアルバイトの女だと思って、油断しているのか私の左隣に座った。
「よお、ねえちゃん。どこの回し者だ?」
「ど、どこって。ま、回し者ってなんですか……」
男が舐めるように私の体を見渡しながら、急に太ももの上に手を置く。
「キャーッ!やっ、やめてください‼」
男が故意に手を動かせたからなのか、それとも偶然なのかは分からないけれど、スカートの裾が少し上がり白い太ももが露あらわになる。
「ナカナカ好い肌をしているな。若いだけあって張りもあるし、胸も大きそうだな」
“大きそうだな”ではなく、実際に脱げばもっと大きいんだよ。バーカ!
チョッと肌と胸のことを褒めてもらい、好い気になる。
こういうところが、私のダメなところ。
「おい、お前たち2人、この女の乗って来た車を調べて来い。ついでにどこに行っちまった分からねえ、頭の弱いビヨンの野郎を連れて戻れ」
「へい」
2人が部屋を出て行く。
これで、この部屋に残る敵はコノ少し偉そうなオッサンを入れて3人。
ほかの部屋に何人居るかは分からないが、少なくとも巨漢の男が居ることだけは確かだ。
ルーが持ってきた音量増幅器で中の様子を探っていると、シーナが変な野郎にセクハラを受けているのが分かった。
シーナのことだから、そう言うあつかいを受けることは覚悟の上なのは十分わかっちゃいるが、居ても立っても居られない。
このままドアを蹴破り、中に飛び込んで大暴れしたいところだが、それをしてしまうと折角シーナが考えた作戦が台無しになってしまう。
“お前たち2人、この女の乗って来た車を調べて来い”
半ば焦りながらも敵に気付かれないように中の様子を探っていると、音量増幅器からシーナが言った通り“2人出てくる”情報を得た。
やはりシーナを信頼していて良かった。
「ルー、2人出てくる!」
「OK!」
俺たちはドアの前から離れ、4階と3階の間にある階段の踊り場の下まで移動して敵が差し向けた2人を待つことにした。
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