第5層 ひとつの終わりの先へ
ズルいです。
フィルカちゃん、緊張する?
……どうでしょう。よく分かりません。メルティエさんは?
えへっ。ちょっとだけ、緊張するかな。
やっぱり、まだ怖いですか?
それもちょっと。でもね、寂しいっていうのが大きいかも。
寂しい?
うん。今日で星樹と星樹の町で過ごした日が終わりになっちゃうのかなって思うと。
気が早いですよ。ゴーレムを倒したわけではないですし、後日再戦、っていうこともあるんですから。
そんなことには……、ならなさそうかなって。ゲールさん達は強いし、なにより、フィルカちゃんが居るから。
私は一度、アイツにコテンパンにやられちゃっていますけどね。
あの時は、魔力も底を尽きかけてたからでしょっ?こうやって、ちゃ〜んと魔力、分けてあげれば。
ひんっ!?!!?
フィルカちゃんってば、あんまり声を出すと、ゲールさんたちに怪しまれちゃうよ?
そ、それは……、メルティエさんが……。
えへっ。ごめんね?
…………。
あっ!フィルカちゃん、怒ってる?
……怒ってません。
それ、フィルカちゃんが怒ってる時の態度だよっ。お見通しなんだから。
……メルティエさんが意地悪するからです。
もお〜。ごめんね、って。ほら、い〜ぱい、魔力、あげるから。
ひ、ひにぃっ……、っっ。
もう。ちょっと
そ、そんなこと……、言われても……。
こうやってフィルカちゃんに魔力を分けてあげる機会はしばらくなくなっちゃうから。今のうちにあたしの魔力でいっぱいにしてあげないと。
そ、それは何だか……。不健全な感じがありますけど……。
も〜。フィルカちゃんのえっち〜。
そ、それはメルティエさんが。……ちょっと、あんまりぎゅっとされると、苦しいかも、です。
………………。
メルティエさん?
ゴーレム退治が終わったら、フィルカちゃんも里までお持ち帰り、しちゃおうかなぁ、なんて。
メルティエさん……。
えへっ。ダメなのは分かってるけど、やっぱり心残りだなぁ、なんて。
……私も、本当はメルティエさんについて行きたいです。ごめんなさい。私がうっかり門を開けてしまったばかりに。
それは謝ることじゃないよって、前も話したでしょ?これは、あたしのわがままなの。だから、「そんなわがまま、言うんじゃありませんっ!」って言ってくれればいいのっ。そうしたら、諦めることはできないけど、仕方ないかな?って思えるから。
それじゃあ……、メルティエさん、そういうわがままは私が、その、困るのでやめてください。
はあいっ。
これで大丈夫そうですか?
たぶん?
大丈夫になるんじゃなかったんですか……。
やっぱり、フィルカちゃんのことが大好きだからね〜。なかなか難しい、のかも?
……やっぱり、メルティエさんはズルいです。
うん?なあに?
いえ、なんでも。
ほんと〜?
本当です。
むぅ〜……。まぁ、今日はそういうことにしてあげようかなっ。…………ねぇ、フィルカちゃん。
はい。
今度は、前みたいな事にならないように、あたし、フィルカちゃんのこと、必ず守るから。だから……。
メルティエさん……。
…………。
……私も、メルティエさんのこと、必ず守ります。傷一つ無しで町まで送り返してみせます。そして、ふたりで、みんなで頑張りましょう。そうすれば必ず。
うんっ。じゃあ〜、怪我しちゃったら、フィルカちゃんに何でも一つ、お願い、聞いてもらおうかなっ。
な、なんでそうなるんですか……。
何がいいかなぁ〜。
……そろそろ行きましょう。ゲールさんたちが様子、見に来ちゃいますから。
あたしは見られても気にしないんだけど〜。
私が気にします。
ああっ!?もうっ!折角の残り数少ない魔力補給が〜。
メルティエさんが修行を早く終わらせてくれれば、また嫌と言うほどできますよ。
それもそっか!お師匠様に事情を説明して――。
そういうズルをするのはダメですからね。
むぅ〜……。フィルカちゃんってば、ほんと、真面目ちゃんなんだから……。でもでも、そんなフィルカちゃんが大好き、かなっ。
…………やっぱり、メルティエさんはズルいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます