第3話
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バタンっと勢いよく扉が開かれた。
「宰相様。今しがた仕える宦官が部屋の外でお倒れになりました」
宰相の白い眉がピクリとつり上がった。
「ほぅ。あの娘。やりよるのぅ」
孫の欄華の部屋に訪れた宰相は、熟した
「お爺様、どうされました」
「なんでもない。お前は男皇子を産めばよい。早ぅ、あの男をその気にさせよ。よいな」
「……はい」
宰相は、いやらしくほくそ笑む。
「いつまでも抗えると思うでないぞ。主上よ」
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その頃──カタンっと音を立て、露竜の部屋を物色する女官が入り込んでいた。
「これね」
「そうです。早くしてください」
「ふふ、同情するわ。仕える主人が乙窪さまだなんて」
「情報を提供したのだから、必ず宰相様にわたしのこと」
「ええ伝えるわ」
儀式に使うお香を盗みだし、受けとった女官はにやりとし「馬鹿な女」と利用した侍女に聞こえないように呟くと、鼻で嗤って部屋を出ていった。
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「ぐっ」
突如、目眩に襲われ露竜は苦しげに胸を抑えた。脂汗を掻き荒い息を整える。
「力を使い過ぎたか」
露竜は痺れる手を擦る。
「それでもやらなくてはいけない」
ぐっと唇を噛み締めた。
「──雨宮様」
そこに背後から女官が声を掛けてきた。露竜は度重なる訪問に何ごとかと振り返る。見覚えのある顔に一瞬戸惑い考え、欄華率いる皇后候補生のひとりの
「こちら蛍佳様からです」
すっと出される。手には香木の
「これは」
「あなたの部屋に揃えさせている祭儀の道具が揃っていないと思われるので」
ドキリとした。儀式は本当は祭儀場で行われるもの。しかし今日も邪魔が入ると踏んで、露竜は自分の部屋で雨降らしの儀をしようと、使える侍女に道具を揃えさせていた。露竜はため息をつきたい衝動を堪えた。
──と言うことは用意させた道具は宰相に阻まれたということ。
まったく、あの古狐め。
「なぜ蛍佳様がわたくしをお助けに? 宰相様の孫娘にあたる欄華様と好意にされているのでしょう」
「勘違いの無いようにと蛍佳様よりきつく言われています。──主上のためだと」
複雑な表情を一瞬して露竜は感情を消して頭を下げた。
「有り難うと」
「礼などは受け取らぬともおおせです。雨宮様を認めた訳ではないのですから」
「そう」
それでも主上をちゃんと慕う者がここにいることに、悪心と喜びを感じずにはいられない。露竜は有り難く香木を受け取り部屋へと向かった。
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