第12話
まぁそんなこんなで親父の前に連れてかれますた☆
「ガラス?」
やだーお父様、ニコニコ笑顔で怖い~。
「ごめんちゃい☆お父様」
「ガラス……今お父様って」
テヘペロ顔でメンゴ顔をしてみれば親父が目をキラキラさせる。
「旦那様」
そのキラキラした雰囲気に水を差したのは、私を簀巻きにして持ってきたヴィアさん。
ちっ、あともうちょっとで丸め込めたのに。
「お嬢様、魂胆が丸見えでございます」
「お前、あとから覚えとけよ」
「何がでしょう、私何も間違ったことは言ってないのですが」
「この……」
「まぁまぁガラス、ヴィア、落ち着いて」
「なぜ旦那様が仲裁役になっているのですか」
コンコンコン……。
カオスと化していたその場にきっちりとした3回のノック音が響く。
「失礼します」
と言葉を添え、きれいなお辞儀をして扉をあけたのは私の専属メイド、ケリーだった。
「お嬢様、そろそろ出発しませんと。王族の約束に遅れたとなれば、謀反を疑われても仕方ないですよ」
「謀反!?」
その言葉に異常に反応してしまい、辺りがシンと静まり返る。
その場にいた全員の目が語っていた。
「急になんだこいつ」
私はそんな雰囲気にやるせなくなってダンと床を踏んで窓を指さした。
「あ、ハハ!早く行こう!今すぐ行こう!」
「あ、ガラス!まだ話が――」
「お父様何言ってらっしゃるの?この国の王子様が最優先に決まってるじゃないですの!」
「お嬢様、口調が変わりすぎです」
「さぁケリー準備準備!」
「お嬢様、押さないでください」
足早に親父の執務室を出れば、そこには目をピカピカ光らせたメイドたちが立っていた。
「け、ケリー?これは?」
「さぁ、お嬢様。準備しましょう?」
じりじりと後ろからも、前からもメイドたちが迫ってくる。
「王族に会うんです。身なりは整えていきませんと」
ケリーはにっこり笑いながら小首をかしげる。
「いや、でもお化粧とかしたら私王族に顔を偽った罪で処刑されちゃうかもじゃない?だからお色直しとかは――」
「お化粧は女の一部ですよ。男だって髪にワックス塗ったりしてるでしょう?」
「いや、でも……いやぁぁぁー!」
私は思わずその場から走り出した。
だってお化粧なんて一度もしたことないし、あの粉っぽい匂いが前世から嫌いだったんだもん!
「はぁ……お嬢様ったら。いつまでもお転婆が治らないですね。ヴィアさん」
パチンとケリーが指を鳴らせばヴィアがさっとケリーの横に立つ。
「お願いしますね」
「状態は何がお望みで?」
「これから王子と会いますからレアでお願いします」
「わかりました」
「え、ちょっと待って。それどういう意味?そんな言葉チーズケーキとステーキでしか聞いたことないんですけど?」
「すぐにわかりますよ、お嬢様」
ケリーがにやりと笑った瞬間、ヴィアがこちらに迫ってくる。
「やばっ――」
そんな言葉発する頃にはもう遅くて。
「ケリー様、レアで捕獲成功です」
「ヴィア様、ありがとうございます」
「ぎゃー‼」
私の体はきれいに縛り上げられて、ヴィアの肩に担がれていた。
「あんた!せめてお姫様抱っこにしなさい!公爵令嬢にこんな無礼が許されると思ったら大間違いよ!」
「これはお嬢様の監督を任されているケリー様からの命令です。決して無礼なんかではないですよ」
「ムムム……あ、親父‼」
最後の光と、親父に助けを求める。
すると私大好きな親父は、心が揺らいだのか
「ガラス……」
と近寄ってきた。そうそう、いい調子――。
「だ、ん、な、さ、ま?これはお嬢様のためですよ」
ケリーがにっこりと怖い笑顔で親父に笑いかければ、瞬で親父は引っ込んだ。
「親父ぃぃぃぃ!」
「ごめん、でもケリーは信頼できるから(怖いから)」
「おい本音漏れてるぞ、親父」
「さぁ行きますよ、お嬢様」
「嫌だぁぁぁぁ」
こうして私はメイドたちにわっしょいされていったのだった。
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