第3話
「オギャーオギャー!!!」
どこかで赤ん坊が泣いている。
さっき神に転生とか言われてどっかに送り出されて早三秒。
私は今暗闇の中にいる。正しくは目がうまく開かなくて真っ暗なのだが。
音は聞こえるし何か柔らかいものを触っている感覚もある。強すぎず、心地よいラベンダーのような匂いもする。
私は今どこにいるのだろうか。
ゆっくり落ち着いて目を開けようとしてみれば、おぼつかないながらも私の視界に光が差し込んできた。
突然入ってきた光の猛射に思わず目を閉じかけるが、その光の先にいた人物に目を見開く。
キラキラしてサファイアのように澄んだ青い目、艶めいた桜色の唇、形のいい高い鼻、そして極めつけに朝焼けをそのまま溶かしたような薄い紫色の長い髪。この世のものとは思えない美しさの女性のご尊顔が私の顔を覗き込んでいた。
ホゥッと思わず見惚れてしまう。こんな美人が存在するなんてここは天国かなにかだろうか。
その形のいい唇が動く。
「はじめまして、私が貴方のお母さんよ。ずっと会いたかったわ」
え?
私は思わず思考が停止してしまう。
オカアサン??え、今この人そう言った??
私が目の前で起こったことに当惑していると後ろからガチャッと扉が開くような大きな音が聞こえる。
突然の騒音にビクッと体を震わせれば、その母親と名乗った人物は眉を寄せた。
「貴方、この子が泣いているのが聞こえませんの??」
「あ、いやすまない……つい」
声の主を確認したくて首を動かしたくても、うまく動かない。どういうこっちゃ。
すると突然、私の視界からお母さん(仮)が消え、チョビ髭が印象的な黒髪を後ろで結ったイケオジが入ってくる。
どうやら彼女が貴方と呼んだであろう男性に私は渡されたらしい。
いや、今渡されたって言った時点で自分が何なのか理解はしてるんだけど、ちょっと頭が追いつかないかな?
「はじめまして、私はクロムエル=バートリー公爵。君の父様だ。これから宜しく、我が愛娘よ」
そう言って頬ずりしてくる父様(仮)。髭が少し痛い。
私が手を出して父親の顔を引き離せば、お母さん(仮)はクスリと笑った。
「貴方の髭が痛いのでしょう、嫌がられているではありませんか」
「嫌!!?べ、別に嫌じゃないよな??お父様大好きだよな?早すぎる親離れはやめてくれ!!」
また引っ付いてくる父親(仮)を手で制しながら私は頭を整理する。
はいはいはい……皆さんもうおわかりでしょうがね……
泣いている赤ん坊、どうやらそれは私だったようだ。
私の転生ライフは赤ん坊から始まるらしいです。
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