第4話 行って来ます

『舞衣様、貴女はこの世界を救うに最も相応しいお方です。妾と誓いの契約を交わして頂きたく存じます。』


(いやぁ…ちょっと待て――


「……何だと?」

――――――――――――――――――――――――

「?」

私が疑問に思うと同時に、有馬優斗が話し始めた。

「はっ、ちょっと待てよ。こんな陰キャが世界を救う?冗談も大概にしろよ。俺とか透を選ぶならまだ皆も納得いくだろうぜ?なのになんもできねぇ舞衣が選ばれるってどういう事だよ!!!」

幼馴染にこんなこと言われちゃあどうしようもない。


『あぁ?貴様、舞衣様に楯突くつもりか。』

優斗の首筋にフレイアルテスの鎌が突き立てられる。

「おぉん?なんだやんのか?」

「やめとけ人類滅びるって」

今にも戦争になりそうな所を慌てて止める。


「ふぅ…うん、私みたいな陰キャはこういう時目立つべきじゃないんだろうけどさ、むしろ優斗が適任だと思うんだよ。適任って言い方もあれか。」


「…………」

優斗は私の方を見て黙ってしまった。


「でもさぁ。こういう時、自分も世界を救う一部になれるって、私にとっては凄く、もの凄く幸せなんだよなぁ。

死ぬかもしれないし、2度と前いたとこには戻れないかもしれないけど、ここで、今生きてるこの世界で幸せなら。人生が色付くなら。それがいい。むしろあんなつまんない人生、もう戻りたくない。」


今まで黙って私の話を聞いていた優斗が口を開いた。

「……お前が考えてることは昔も今も良く分かんねぇけどよ。お前が世界を救うにふさわしいってんなら、俺らのプライドとか思い全部背負って行って来いよな、新しい世界に。」

「皆、期待してるよ」

「選ばれちゃったんだ、そりゃ行くしかねぇ!」


(あれ、私、なんか皆に応援されてない?)

嬉しかった。控えめに言って、人生で一番。


――フレイアルテスとの契約を交わした後、私はある所に向けて出発する所だった。

「あのぅ…王様…」

「む?どうした、舞衣よ。」

「えと、その、クラスメイトってどうなるんですか…?」

私が一番疑問に思っていたことだ。

もし、このまま役目がないのだとしたら―あの時の事を思い出して背筋が凍る。

「ふふ。心配ご無用だ。もちろんあやつらも立派な選ばれし者達。魔術高等学校『シュレンリクス学園』に推薦で入学してもらい、ビシバシこの世界の事を叩き込む事になっておる。」

「良かった…有り難うございます。」

「うむ。安心して出発するがよい。武運を祈るぞ。」

「はい」


「舞衣」

優斗に声を掛けられた。後ろにクラスの皆も。

「人類の概念ぶっ壊して世界変えてこい!」

笑いながら優斗が言った。

「ははっ、何だそれ笑

       ……行って来ます」

「おう」


「あ、最後に1つだけ皆に。

  名を挙げて皆に良い報せ届けるから。待っててね。」


「「「おう!!」」」


皆にここまで言われちゃあ自信満々に大口叩いてやんなきゃ駄目ってもんだ。有言実行しないと。


クラスメイトに見送られながら、私はその地を後にした。

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