第3話 選択するのは君
私は、理解できなかった。
―――――――――――――――――――――――
(いやいやいや、ちょっ、えぇ…?)
まぁ私が何をどう理解できていないのかはお察しの通りだろう。
「いや、何言ってんの?召喚?異世界に?僕達が?」
くどいくらいはてなをつけて言う松島透だが、その後
「その通りですわ!もしここが本当に異世界だとしても、あたしは元いた世界に帰らせてもらうわ!」
「えぇ!えぇ!桐葉様の言う通りだわ!こんな陳腐なところ、いてられない!大体、桐葉様と私はもっと丁重に扱われるべきなのよ!」
クラスのお嬢様、一条
(丁重に扱えってなんやねん、ここまで来てお嬢様気取りか!!それ以前に大問題があるやろ!!!)
文句は心の中までで留めておこう。何をされるか。
「それはできませぬ。このまま元いた世界に返すとあのお方に―」
王が言いかけた。誰か。
「ふん!そんな馬鹿らしい嘘、聞いてるだけで反吐が出るわ!!誰がなんと言おうとあたし達は帰るわ!!」
そう言うと、一条桐葉と吉柳弥江は後ろにある扉に向かって歩き出し、ドアノブに手を伸ばした、その時
ギギギッ。
ドアが開いた。反対側、から。
『誰だ。妾を起こそうとしたのは。あぁ?』
人間より長いエルフのような耳。それにかぶさるように伸びた藍色の髪。戦闘服のようなものを纏い、手には自身より大きな鎌を持っていた、そいつ。
彼女こそ王が言いかけた、世界を繋ぐ番人フレイアルテスだ。
「「ヒッッッ」」
『妾の任務の邪魔をしたのは貴様か、名は何と―』
「はっ、なぁにが番人よ!どうせこんなの脅しでしょう!?あたし達がこんなのに騙されるわけ―」
グシャ
(………っえ)
目の前で、何が起きたか分からなかった。
一瞬動いた、彼女の、鎌。そこについた、誰かの、血と、変わり果てた、一条桐葉と吉柳弥江の姿を、見て、悟った。もう、逃げられない。
『はぁ。最近はこういう奴が多くて任務が進まねぇよ、王様ぁ。稀に見る生粋の者はいないのかよ―』
恐怖の絶頂に達している私達をジロジロと見ながら喋る彼女が、一点を――
私を、見て、固まった。
「え」
彼女とばっちり目が合い、初めて声が出た。
と、思うと
バッッ
『愚かな行動をお許しください、主。お恐れながら、名は何と申しますでしょうか。』
私に頭を下げて言った。
(え、これ、私に、言ってるよ、ね?)
「柳、舞衣で、す。」
緊張で掠れた声が出た。
(え、あいつ何者?)
(陰キャにいきなり頭下げてるよ、あの怖いやつ)
(怖ぁ、一体何やったんだよ)
クラスの何人かがざわつき出す。
『舞衣様、貴女はこの世界を救うに最も相応しいお方です。妾と誓いの契約を交わして頂きたく存じます。』
(え―)
「……何だと?」
私が喋りだす間もなく、有馬優斗が口を挟んだ。
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