第5話 一夜限りの冒険
それから私は毎日メリーナの元へ訪れ、交流を重ねていった。彼女も私のことを歓迎してくれ、毎回快く受け入れて話をしてくれた。メリーナの好きな食べ物、天性属性、戦闘スタイル、騎士を目指した理由。彼女は自身のことを話してくれたおかげで、私は彼女のことを知ることが出来た。
そうして話を続け1週間が過ぎたころ、私がいつものように彼女と話をしていた時だった。
「あの、アルマリアさん」
「ん? どうしたの?」
「私ね。あの奇跡の夜景をもう一度見てみたいんだ」
「良いね。夜景のために冒険するのも旅の醍醐味だよね」
「……それもそうなんだけど、実はもっと他に思うことがあってね」
「思うこと?」
「うん。多分、私がこの先前に進むために、必要なことなんだと思うんだ。それに、一つだけそうしてもやりたいこともあるんだよ」
「……そっか」
「それでね、アルマリアさん」
「うん」
「今日の夜、一夜限りの冒険に連れて行ってほしいんだ」
私の顔を見つめる彼女の表情はいつにも増して真剣で、深い緑色の瞳に吸い込まれそうになる。私は彼女の言葉に応え、病院を後にした。
空は雲が多い夜空。程よく冷える空に降る小雪をかき分けて、私は箒に腰掛け彼女の待つ病院へと向かう。職員にバレずにつれていくには窓からこっそり出る方法がシンプルだと考え、私は彼女のいる病室の窓へと向かう。
病室に着くと、すでに彼女は準備を整えていたようで、窓の前にスタンバイしていた。私の姿を見るや否や、窓をすぐさま開け、私に手を振る。私は窓に近づき、手を伸ばす彼女の手を取り、後ろへと風魔法を駆使して持ち上げて座らせる。そうして、雲の隙間に照らす月下の元、一夜限りの冒険が始まったのだった。
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