第4話 直感に従って

 彼女の悲しみの感情はあの後すぐに消え、メリーナの雑談へと移行し、時間までずっと話していた。


「それでね! 私は超近接特化型の魔法戦闘が得意なんだって分かったんだよ! だから、当てられればほぼ一撃で魔物を葬れると思うんだ!」

「一撃はすごいね。私の友達でも一撃まで出来る人はいなかったし、メリーナにとってその戦闘スタイルが天性なんだろうね」


 彼女の戦闘スタイルの話しを最後に、イヴリンが私の肩を軽く叩き、声をかける


「あ、あの、そろそろ時間的に出た方が良いかも」

「うん、分かった。ごめん、盛り上がっちゃった」

「そんな大声じゃなかったし、そこは大丈夫だと思う。そ、それじゃあメリーナ、私たちは今日はこれで帰るよ。さっき言った私の所見は主治医と看護師に共有するからね」

「はい、イヴリン先生! ありがとうございました! アルマリアさんも、面白いお話しありがとうございました!」

「うん、こちらこそありがとう。お大事にね」


 そう言って、私たちは病室を出て、その病院を後にした。私たちはそのままお昼ご飯を食べにバルへと行き、食事をしながら、彼女について話をする。


「その、ありがとう、彼女と話してくれて」

「全然問題ないよ。でも、なんか彼女も複雑な事情がありそうだね。さっきのあの様子だと、もしかして彼女の家族って……」

「うん。彼女の家族は、すでに亡くなってる。さっき話していた通り、あの奇跡の夜景を見に行った時に、魔物に襲われたみたい。彼女もその時に応戦したみたいだけど、無理をし過ぎて急性摩耗症候群を発症して倒れたんだ。そこにこの街の騎士団が駆けつけて救助されたんだよ」

「そう、だったんだ。それじゃあ、メリーナが入院しているのは、摩耗症候群の治療でいるんだね」

「うん。重度の摩耗症候群の症状があったけど、やっと最近になって安定してきたみたい。元々病弱体質で後遺症が残りやすいみたいだから、まだ風邪症状が出る時があるけど、魔法も普通に使っても大丈夫なくらいに回復してる。まあもうあと少しで1年近くになるから、結構時間かかったみたいだけどね」

「そっか……」

「アルマリア? 何か気になることあった?」

「気になることって言うか、私から見たら、彼女はまだ心の回復は全然追い付いていない感じはしたかなって。笑顔もなんか、ちゃんと笑えてないって言うか。ほんと、直感的な感じなんだけどさ」

「……やっぱり、アルマリアの直感は時々鋭いよね」

「時々って何さ。毎回鋭いと自負してるけど」

「はいはい。まあそれは置いておいてだけど。アルマリアの言う通り、病院の主治医から聞いた話も似たようなことを言っていたんだよね。気持ちがまだ追い付いていないって」


 彼女にとって、急に家族を失った現実について、心の整理が追い付いていないのかもしれない。夜の奇跡を見たあの日に心が凍結してしまったのかもしれない。


「その、アルマリア」

「ん?」

「もし、時間があったら、しばらくの間、メリーナの話し相手になってほしいんだ。アルマリアなら、多分すぐに信頼関係作れると思うし、そこで、彼女の願いが出てくると思う」

「別に良いよ。旅人は金がある時は時間たくさんあるからさ。私も、彼女のことほっとけないと思ったし、この街にいる間は交流するよ。ちなみに、イヴリンは彼女の願いって聞いたことあるの?」

「あったら伝えてるよ」

「それじゃあ、なんで彼女が何か願いを抱えてるって考えたの?」


 その質問に彼女は少し間を開け、控え目な笑顔でこうこう答えた。


「それはね。――私の直感だよ」

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