第2話 願い抱える少女
イヴリンと一緒に酒場へ入り、席に着く。二人ともパンとシチューのセットを頼み、冷たい水を飲みながら、雑談へと移行した。
「それにしても、騎士団ってこんな北の国まで出張あるんだ。大変じゃない?」
「う、うーん。まあ確かに距離はあるけど、基本的には騎士団からお金出るし、私は旅するの好きだし、それに、いろんな国の病院を見れるから、楽しいよ」
「ああ、そうか、今は騎士団の医療部隊にいるんだっけ? 元々病弱だったのに、逆に病気や怪我を治す側になるなんて、すごいよね」
「そ、そうかな。でも、むしろ病弱だったから、自分のように苦しむ人を見過ごせなかったって言うのは、あるかな。それに、ここ周辺は深夜に強力な魔物が出るみたいで、けが人が絶えないんだよ」
「あー、それは旅人ギルドでも情報で回ってたな。確か、『デッドウィンター』って異名の熊型の魔物だよね。噂じゃ、オーロラと流星群とミッドナイト・ダイヤモンドダストが発生した深夜に出現したとか言う」
「そ、そうそう。その魔物の被害が結構出ているみたい。明日、その被害を受けた子にまた会いに行くんだ」
「子供も被害に会ってるのは大変だね」
「……その、アルマリア」
「どうしたの?」
「もしよかったらなんだけど、明日、その子に会ってほしい」
「別に良いけど、イヴリン的に何か考えがある感じ? ほら、そうやってお願いしてくるのって、何かしらの意図があって言うことが多かったじゃん」
「……うん。その、実は、その子のお願いを、聴いてほしいなって、思ってね。細かなことは明日話すから……。どうしても、アルマリアにしかお願い出来ないことなんだよ」
「良いよ。全然問題ないからさ。そんな改まんなくて良いよ。明日、一緒に会いに行こ」
私は彼女のお願いを快諾する。イヴリンからのお願い事は今に始まったことではないし、彼女のお願い事は大体は優しさからくるものが多かったから。
その後はごはんを食べることに集中し、食後のデザートも堪能しながら学生時代の雑談も交え、その日を終えたのだった。
次の日、私は宿の前で待ってくれていたイヴリンと合流し、その子が入院している病院へと足を運んだ。その病院はこの街で一番大きい病院で、扱っている科が多いのか、フロアには人が途切れずに往来していた。
イヴリンは受付に一声かけ、そのまま病室へ続く階段へと向かう。2階フロアの奥、そこにイヴリンの言う彼女がいた。
イヴリンはドアを開ける。4つのカーテンで仕切られたベッドの窓際の1室、そこにイヴリンが向かい、一緒にカーテンの中へと入り込んだ。
彼女はすぐにイヴリンに気づき、ぱっと笑顔を咲かせ、響かない程度の声量で、挨拶した。
「おはようございます! イヴリン先生!」
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