夜空に輝く命のしずく

後藤 悠慈

第1話 旅の醍醐味と再会

 ゆらりゆらりと舞降る雪は空を覆いつくしている。空は曇り、天気は小雪、気温はそこまで寒くない。私は薄手の上着のボタンを締め、三角帽子を深くかぶり、泊まる予定の都街へと箒を飛ばす。

 私、旅人のアルマリアは現在、北方の国を旅している。その国は、凄まじい規模の山々、北方大連峰に最も近い国であり、北であるために気温は低く、雪が降る季節が長い。旅人用の高機能の衣類を着ているために体が冷えることはないし、寒さも耐えられる程度ではあるが、それでもこの環境にずっといたいとは思えない。私の箒を飛ばす速度は上がり、そして何とか、夕方を迎える前に目的の都街へと着いたのだった。

 都街へと着いたらまず先にすることは宿をとること。旅人ギルドの証であるピアスを門番へと見せ、安全のために箒から降りて早歩きで宿のある地区へと向かう。

 その街はごく一般的な都街で、どの家も寒さに対応している作りをしている。露店も少なく、ほとんどは家屋の中をお店にしており、そしてそろそろ昼の店は終わりの準備を進めていた。私は足を止めず、宿を探し、そしてやっと宿が連なる地区を見つけ、部屋を取った。今回の宿は狭い個室。値段はもっとも安く泊まれる宿の約2倍。前の街でそれなりに稼いでいるので気にならない。

 宿が取れたら次はごはん屋だ。大抵酒場に行けば腹は膨れるので、私はすぐに酒場を探す旅に出る。外はもう夕暮れも終わりをに差し迫り、黒の空が顔を除き、その空を彩るように小雪が未だに降る。その小雪の中、この街の住民たちは夜の店の準備をするもの、昼の店を終えて帰路に着くものではっきりと分かれ、大通りはそれとなく人が増えていた。私はその人混みの流れに入ろうとした時、声をかけられた。


「あ、アルマリア……?」


 聞き覚えのある声が聞こえ、声の方を見ると、そこには騎士養成学校時代の友人がいた。


「イヴリン? え? なんでここに?」

「そ、それは、出張でこの街の病院を見て回ってるんだ。まさか、ここで会えるなんてね。まさに、運命的?」

「本当にね。まさか魔法使ってたりする?」

「し、してないよ。流石に乱用してないって。アルマリアはこれからごはん?」

「そうそう。さっきこの街についてさ。もう腹ペコなんだよね。なんかよさげな酒場知ってる?」

「……知ってるよ。良かった。もしよかったら私の相談にも乗ってほしいし、一緒に行かない?」

「相談? 大丈夫だよ。それじゃあ、行こ」


 私はイヴリンの小さな背中を追うようにしてついて行き、ちょっとおしゃれな酒場へと入って行った。

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