第37話
「これって…」
「ああ、リリーフィアの愛し子としての能力だな」
「姫の能力は癒しだったのね」
「そのようだな。 シャラーティルは気が付いていないようだが、話すとうるさいし、しばらくは黙っているか」
フィーディアンとリューシティアはポンポンと話を進めていった。
リリーフィアの持つ能力、癒しは妖精の愛し子としての力だ。
愛し子は必ずしも何かしらの能力をもって生まれてくる。
リリーフィアのように癒しの力を持つ者もいれば、自然を豊かにする力の者もいる。
「クレイセルは未来を視る能力だったな」
「ええ、その力で人と妖精が仲良くなる未来を実現させたのよね」
ふたりが懐かしき思い出に浸っているうちに、シャルロッテはシャラーティルに説教を始めた。
「シャラーティル、先にお姉さまのお部屋に案内することの方が先ではなくて? お姉さまだって疲れるのですから休憩を挟むことは大切ですわよ。 そもそも人は妖精とは違って休息の時間が必要ですわ。 それに…」
「わかった、もう分かったから。 花畑に行くのはもう諦めるから。 だからもうやめて!?」
シャラーティルは叫ぶと、耳をふさいだ。
「シャル、もうやめてやれ… シャラーティルも反省しているからな」
フィーディアンの言葉に、頬を膨らませたシャルロッテだったが、渋々という感じで納得した。
「まあ良いわ。 とにかくお姉さまのお部屋に案内しますわ!」
シャルロッテは、おんぷが見えそうなほどご機嫌で城の中へと足を踏み入れた。
「お姉さま、こちらがお姉さまのお部屋です。 隣はシャルの部屋ですのよ」
「しゃるりょってがおとなりなの? それならいつでも遊べるの! でも、どうやって下に降りるなの?」
リリーフィアの質問はもっともである。
なぜならここは城の二階にある一室。
だが、ここまで来る間に階段はないどころか、段差のひとつも無かったのだから。
「えっ? 飛べばいいじゃ……そっか、リリーフィアはまだ羽がないんだったね。 それじゃあ、毎回誰かがリリーフィアを抱いて移動すればいいじゃん」
「それでは手が空いてない時はリリーフィアが移動できないだろうが。 馬鹿か、お前」
シャラーティルは名案という感じで言ったが、フィーディアンによって
「あ~! フィーディアンが僕のことばかって言った。 ばかって言った方がばかなんだよ! フィーディアン、そんなことも知らないの?」
ばかと言われたことに怒りつつもフィーディアンを嘲笑うシャラーティル。
「しゃりゃーてぃりゅ、悪いかおちてるなの」
リリーフィアは怯えたような目をシャラーティルに向けた。
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