4.まさかの王女様

「……でっか」


 頭回んねぇわ、やっぱ駄目だわ俺。

 なんだよこれ、なんでこんなでっけぇのがいるんだよ。こんなところで俺の人生ゲームセットか? なんだよそれ、なんだよそれぇ!


「……怖く、ないんですか?」

「シャベッター!?」


 思わず身を捩って壁際に逃げる。いやだって仕方ねぇじゃん、急に目の前にでっかい捕食者かと思いきや急にロリカワボで喋り出すんだぞ? 手足縛られてなかったら暴れ回るぐらいにはびっくりしてるわ、ってか腰抜けたわ。


「ご、ごめんなさい……やっぱり怖いですよね、あっちに行きます……ごめんなさい」

「えっ、あっ……いや違うんだ! なんだか色々情報が多かったっていうかびっくりしたっていうか……とにかく待ってくれ!」


 狼は、その大きな尻尾を下げながらも立ち止まってくれた。俺から少し離れた場所にお行儀よく座り、そのまま俺の方をじっと見ている。──取り敢えず、話し相手を確保。人間じゃないし、喋る狼だけど。


「……」

「……」


 気まずい。

 自己紹介でどうにかしよう。


「俺は早川言羽! なんか突然……勇者? ってのに選ばれて、バンドンとかいうクソジジイの王様に呼ばれたんだけど……なんかこう、色々あってここにぶち込まれたんだ!」


 なんちゅう自己紹介だ、馬鹿野郎。

 こんなので相手の興味を引き出せるわけがないだろう。


「勇者様!?」


 引き出せたわ。──ってちょっと待て、急になんか近づいてくるんだけどあの狼!?


「ひっ、た、食べても美味しく……」

「呼ばれたのですか!? 勇者として、お父様に!?」

「お、おう……ってあれ? お父様って、え?」


 いきなり滅茶苦茶に脳をかき乱され、俺は困惑した。それを察したのか、狼の方も自重してその場に座り込んだ。なんだか申し訳なくなるぐらいに、俺はビビってしまっていた。


「……言っても信じてもらえないかもしれませんが」

「……おう」

「私の名前はアリス・フロイクオール。現国王バンドンの娘……つまりは、第一王女なのです」


 まじ?

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