3.ロリカワボ狼、爆誕
朦朧とする意識の中、俺はゆっくりと瞼を開けた。
そこは、先ほどいた場所とは随分と違う……あまりにも薄暗い、とても不気味な場所だった。なんか見渡すと檻の中のような、それにしては広いような……まぁとにかく、あまりいい印象は抱けない場所だということは間違いない。
「ってぇ……どこなんだよ、ここは」
まだこの世界の事情も何も知らないのに、いきなりこの扱いはマイナスポイントだと思う。くそっ、俺にチートやらトンデモスキルがあれば今頃あの爺をひき肉にしてやってたのに……まぁタラレバに固執するよりも、目の前の現実を捉えたほうがいいだろう。
立ち上がろうとして、自分の手足が縛られていることに気づく。
「畜生……俺が何したってんだよ!」
誰もいないことをいいことに、大きな声を出してみる。思ったよりも反響する自分の声にビビって、俺は思わずびっくりしてしまう。そう言えば、こんなにでかい声を出したのは何年ぶりだろうか……前の世界では、こんな声でいつも叱られる側だったからだろうか? 昔からいつもそうだった。……それがこんな世界でも変わらないと思うと、なんだか急に虚しくなってきた。
「……くそったれ」
沈んでいく。ただでさえメンタルがネガティブなのに、掘り起こした過去に映る自分を見る度に……自分で自分が嫌になってきた。
「……あの」
「ひぃっ!? だ、誰だ!?」
気づかなかった。俺以外に誰かいるのか? だとしたらあのジジイは相当ひどいやつだ、声から察するに多分女の子……しかもかなり幼い。そう言えばさっき、愛娘がどうとか……ああくそ、頭が痛くてあんまり覚えてない。
(いや、そんなことよりも)
もしかしたら、俺のように暴力を振るわれたのかもしれない。その上こんなところに閉じ込められて……子供なら、とっても不安で仕方ないはずだ。
「……こ、こんにちは! あの、俺は怪しいやつじゃなくて……その、姿を見せてくれないか!?」
何を言っているんだろうと自分でも思う。
それでも、闇の中に紛れたその子は応えてくれた。
「……怖がらない?」
「……! ああ、約束する!」
ようやくまともな会話ができて、なんだか嬉しかった。いや、そもそも前の世界でもまともに人と話していなかったのかもしれない……そう思うとなんだか悲しかったが、今はそんなことは置いておこう。──闇の中から、出てきたその姿は──
「……うそだろ」
思わず漏らしたその一言の向こう側には、俺を一呑みにしてしまいそうなほど大きい……白い狼が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます