第5話

 私は納戸を片付けていた。買ってきた箱をそこにしまうことにしたのだ。

 納戸の奥に段ボール箱が押し込まれていた。開けてみると、昔の教科書や通知表、夏休みの課題で描いた下手な絵などが出てきた。これも課題だった日記帳の間から、変色した写真がひらりと落ちた。

 おかっぱの髪に白いブラウス、赤いスカートの私が、何が気に入らないのか不機嫌な顔で写っている。こんなもの、いつ撮ったのだろう。

 私は写真を段ボール箱に放りこみ、元の場所に戻した。

 がらくたを処分してできたスペースに買ってきた箱を押し込むと、不思議なほどにぴったりと入った。私は納戸の扉を閉めた。


 私は縁側に座って団扇を使っていた。

 もうあの少女に会いたくなかった。あれは良くないものだ。遠くへ連れて行っても、すぐに戻ってきてしまうと分かりきっている。最初にあの男が家に連れ込むのを止められてさえいれば。悔しくて歯噛みをした。

 気配がして横を見ると、少女がうつぶせに寝そべっていた。縁側の冷たい床に白い頬を押し当てて、まつ毛の長い瞼を閉じている。

 私は下駄をつっかけて庭へ下り、物置から鋸を持ってきた。

 少女をごろりと転がし、お腹に鋸の歯をあてて挽いた。拍子抜けするほど簡単に刃は入り、さくりさくりと胴体を切っていった。五分とかからずに少女の体は分断され、金太郎飴のような断面を見せていた。

 私は納戸に行き、箱を抱えて戻ってきた。すると少女の体は元どおりにくっついていた。ため息をついて私はもう一度鋸を手に取った。今度も簡単に少女を切り分けることができた。

 私は箱を開けて最初に下半身を、次に上半身を箱に入れた。上半身をうつぶせで入れるとつま先と頭が当たってつっかえたので、向きを変えて入れ直した。そして蓋を閉め、錠前をしっかりと掛けた。抱え上げると、思ったよりもずいぶん軽かった。

 私は箱を納戸へ運び、また縁側に座って団扇を使った。これで少女に悩まされることは無いはずだ。しかし心はまだざわついていた。

 蚤の市の店主は、保管期限は十年だと言っていた。その後はどうなってしまうのだろう。まあいい。当面考えないことにする。

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