第2話

 庭で落ちた芙蓉の花を拾っていると、背後から声がした。

「何してるの」

 振り向くと赤いスカートの少女が立っていた。

「あなた、また来たの」

「何してるのってば」

 少女は重ねて聞いた。

「庭の掃除をしているのよ」

 少女は満足したように私のそばを離れ、玄関を開けた。

「靴がないわ。私の靴がない」

 半開きの扉の中から、少女が訴える声がした。

「捨てたわよ。置いていくのが悪いんでしょう」

 返事はなかった。私は黙々と庭の掃除を続けた。

 ばさ、ばさ、と音がして、しまいに固いものが背中に当たって跳ねた。少女が私の靴を次から次へと、庭のあちこちに放り投げていた。

 文句を言おうと立ち上がると、少女は甲高く笑いながら白い柵を抜けて走り去った。私は靴を拾い集めた。

 何もない玄関の三和土の真ん中に、きちんと揃えた赤い運動靴だけが置かれていた。私はそれを取り上げ、どうしようかと迷った挙句、隅に置いた。

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