4日目①
* * * *
これは復讐だ…
面白おかしくいじめてきたやつらにも
それを見て見ぬふりしたやつらにも
目にものを見せるチャンスなんだ…
どうせこれから生きていたって
一生同じような日々が続く。
そんなのはまっぴらだ。
だからこの復讐劇を思いついたんだ…
これは復讐だ…復讐なんだ…
* * * *
4日目の朝。僕は憔悴しきっていた。
情報量が多すぎる…
夢は全て主人公目線だと思っていた。
しかし先ほどのは何だ?
あれはまるで…首謀者?
そしてセリフからどうやらこれって…真宮?
そう考えるといろいろと辻褄が合ってくる。
いじめられっ子である真宮が、鬼久保達や、見て見ぬふりをしていた
クラスメイト全員に復讐をする為仕組んだ…?
確かに途中監視カメラは設置されていなかったが、それも真宮が
1班のメンバーと行動を共にしているから見る暇が無い…と言う事か。
いつもスマホをいじっているのは…広場のスクリーンの遠隔操作?
家は金持ちだと聞いた事があるから、金に物を言わせて、5組が去り、
6組が来るまでの間に、この島に様々な罠を施した…
と言う事は虎も買ったのか…?なんというご都合主義…
…この作者は11流…
唐突な犯人の判明は、前日の一ノ瀬非ヒロイン説を霞ませる程には衝撃だった。
しかし、犯人が分かったからと言って、今物語り外にいる僕には
特に何も出来ないのも事実…結局はなるべく近寄らない、という事になる。
なんせそれの解明は主人公達の仕事なのだ。
「おい、鈴木!起きてるか~!?」乱暴な声で田中が僕を起こしに来る。
言われなくてもずっと起きてるよ…僕は無言で起き上がった。
朝早くから行動するはずが、抱えるものが多すぎてなかなか行動ができなかった。いつもと様子が違う僕に対し、みんなは何も言わなかった。
相当殺気立っていたのかもしれない。
なんとか食事を詰め込んで行動を起こしたのは昼過ぎになっていた。
今回は女子に食料調達をお願いし、
僕と田中と木村君でこっそりと広場に向かった。
一ノ瀬非ヒロイン説…そして真宮首謀者説…
話すべきか話さないべきか…いや田中には絶対一ノ瀬さんの事は話してはいけない…いやしかし…
頭の中で同じ事がぐるぐるしている。
「なんか朝から鈴木君の様子が変だね…」木村君が田中に話しかける。
「腹でも痛いんじゃないか~?」くそ、のんきなやつめ…
うんうんと悩みながら歩いている僕に例のごとく突然閃きが舞い降りた。
「む…」突然ルートを外れる僕に田中と木村君は慌てる。
「ちょっと!そっちはまだ安全確認していないよ…!」
「うんこか?」田中、お前は黙っとけ。
「ちょっと…こっちが気になって…」
いつもあまり通らない森の奥の方に不自然な盛り上がりがあった。
そこから突き出した手が覗いている。
「ひっ!」木村君が声を上げる。
「おい、これって…」田中が戸惑いながら僕を見た。
突き出した腕は損傷がひどく、かろうじて判別できる服装からは、
クラスメイトではない事は明らかだった。
だとしたら…
「これは恐らく管理人の南さん…?」
ずっと姿が見えなかった南さん…南さんと真宮はグルではなかったのか…?
この島に罠を張り巡らせるのに邪魔だから殺された…?
「真宮に殺されたんだ…」思わずつぶやく僕の声に2人が反応する。
「なんで真宮なの?」む…しまった…
しかし、真宮首謀者説は話しても問題なかろう。
僕は今朝見た夢の話を2人に聞かせた。
「でもさぁ…こんな仕掛け作って、人殺して…本当に真宮君がした事かなぁ…?」
木村君は僕よりも少しだけ真宮と話す機会が多かったようだ。
「いつもおどおどしてて、こんな事出来るタイプじゃ無いけどなぁ…」
「あれじゃね?ぶち切れちゃったんじゃね?
金持ってるんだったら人を雇ったとか…」僕の意見も田中に近い。
でも…
「もしかして他にもラスボス側がいるのかも…?」
それはただの想像に過ぎなかったが、なんだかとてもしっくりきてしまった。
ただでさえ閃きまくっている僕の直感だ。バカに出来ない。
この島に潜んでいる誰かがいるのか…それとも生徒の中に裏切り者がいるのか…
「南さんは…どうする?」遺体を視野に入れないように木村君が僕に問う。
恐らくはこの遺体は主人公側が見つけて今後の話の展開に必要な要素のはず。
遺体はそのままに、僕らは元来た道を戻った。
* * * *
「くそっ!」鬼久保はそこにあったゴミ箱を蹴りつけた。
今日もあいつらは自分達だけで食料を占領している。
「鬼久保君、私達だってまだ食料はあるんだから落ち着いて…」
同じ班の山井が宥める。
「そうッスよ、それに後2日我慢すれば迎えがくるんスから…」
大森も機嫌を取ってくる。
「うるせぇ!!」壁を殴りつけて1人外に出る鬼久保。
しかし、猛獣がうろついているという話を思い出し、扉の外で立ち止まった。
「どいつもこいつも気に入らねぇ…」
誰もに恐れられたこの鬼久保様を、あいつらはゴミを見るような目でみやがる…
特に東雲…あいつはいつもオレにたてついて本当に気に入らない。
「あいつら…ぶっ殺してやろうか…」
その時、背後にある扉の向こうで誰かが言った。
「このままあいつらに馬鹿にされっぱなしでいいのかい?」
「誰だ!?」聞いた事があるような、ないようなその声は続けて言った。
「みんなに恐れられた天下の鬼久保様もサバイバルでは腰抜けになるんだな。」
そう言って馬鹿にしたように笑う。
「なんだ…と…?」怒りでわなわなと震える
「気に入らないやつは消せばいいだろう?」
「は?」突然何を言い出すのか。
「それともそんな事怖くてできないか?」そう言って更に笑う。
「てめぇ…一体誰だ!?」勢いよくドアを開けたがすでにそこには誰もいなかった。
よく見ると足下には灯油とライターが落ちていた。
「ふん…おもしれぇ…やってやろうじゃねぇか。」
鬼久保は不適に笑みを浮かべた。
* * * *
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